作品タイトル不明
止まりて壁を見よ
堀に落ちないよう着地してから、身を隠すわけでもなく。
ただ茫然と外壁を眺めている。
「追撃・・・・・・は、無いみたいですね?」
「らしいな。目を外に出したくねぇのかもな。それほど数が居ねぇとか」
「都の中でしか精神操作が出来ない可能性は無いんですか?」
「それはねぇな。だとしたら門番も内側に配置してるはずだ。範囲への影響を行うには結界か、それに近い魔法が使われてなきゃ無理なんだ。しかも、そういう空間は閉じてあるのが基本だからな。入ればそれだけで気付ける」
例外としては、皇都の軍部へ入り込んだ時に仕掛けられた共鳴を応用した方法なんかもあるが、そのためにもう1つの都を作ってるわけもねぇ。
っつーか、地下にでも埋まってなきゃ、そんなもんはとっくに見つけてる。
「そういうものなんですね」
質問をしてきたヨハンは俺の答えに納得したが、
「いえ、結界自体は張られていましたよ。私達に直接の関係はありませんでしたけど・・・」
ユノは反するような意見を述べる。
「そんなもんがあったのか?」
「はい。証拠はコレです!」
質問すると、両手に縄の付いた石を持ち上げてドヤっと返す。
「そいつは――地上から投げられてた石か・・・?」
「そうです! コレには精神系統の魔法が付与されて投擲されました」
「教会の魔法ってことだな?」
「流石ゼネス様! 教会の魔法は多くが精神系統のもの。祈りや安心、幸運などがそれに当たります。効果の上昇なども、その中に含まれますが、コレにはそういう魔法が複数重ねて掛けられていました。具体的には命中の祈願、幸運の招来、効果の増幅です」
「確かに祈祷寄りの魔法ばっかだな。だが、それだけで結界が張られてたことにはならねぇよな?」
「もちろんです。コレが投げられている間、私はずっと下を向いていたので気付けたのですけれど。その通りには人が少なく、更に集まっている全員が教会関係者だったように見えました」
「偶然・・・にしちゃぁ出来過ぎか」
「はい。それに他の道はもっと人が居ましたから、あの周りだけ教会関係者ばかりしか居ないのはおかしいと思って・・・」
「だからそこに教会の人間しか入れない結界があるんじゃねぇかって?」
「そのような結界を使っているところがあると、お爺様に聞いたことがありました」
権力者の緊急避難経路みたいなもんだ。
いや、場合によってはそのために使われる道でもあるんだろう。
それが今、なんの役に立つか?
言うまでもねぇが、教会まで押しかけるのに使えるはずだ。
領主の屋敷にも、軍事施設にも、教祖はいなかった。
となりゃぁ残ってるのは教会ぐらい。
再攻勢を仕掛けるなら、目指すべき場所はそこになり、そのための道だ。
ただ、
「干渉できるか?」
「基本が変わっていなければ、多分。大丈夫・・・のはずです」
結界を利用するなら破壊はできねぇ。
壊せば教会関係者以外の敵も入ってくるからな。
張られてる結界は恐らく、教祖が来る前から存在してたんだろう意識結界。
元々教会に属してた人間以外からは、なんとなく使いたくねぇ道って感じの意識がまだ残ってるからこそ、他に人が居なかったんだ。
それを俺達も使えるように干渉して変化させる必要があるものの・・・。
「合流したら全体で100人を超える。それでも出来そうか?」
「条件を絞れれば、きっと・・・」
「それは・・・厳しいんじゃねぇか?」
現行の条件は”教会”と”権力者”あるいはその”血筋”辺りか。
そこへ新しい条件を付け加えて、俺達が通れるようにするっつーことは、全員に共通する条件が必要になる。
一番近いのは”都の外から来た人間”だが、これだとリミアが含まれねぇ。
”権力者”や”血筋”の条件が変わってなければこれで通れるかもしれねぇが、その中身が教祖を基準に書き換えられてたら無理だ。
「どうかしましたか?」
「いーや、なんでもねぇよ」
何気なく飛ばした視線に気付き、尋ねるリミアを適当に流す。
ここはリミアの故郷。一番の当事者を外すわけにはいかねぇ。
それはヨハンの時に思った事だ。
一生記憶に残ることなら、ちゃんと知っておきたいだろう。
けどそうなると、他の候補がねぇんだよな。
俺達は寄せ集めだ。貴族や軍属では括れねぇし、ケイが連れてきた兵隊達は元移民で北大陸の出身だ。
付け加える条件が多くなれば、干渉にかかる時間も延びる。
「・・・いっそ、全員を教会の関係者と偽った方が早いかもな」