作品タイトル不明
side―――ケイト
どうにかしなきゃ!
拮抗した状況と異常な敵の様相が焦燥感を煽る。
こんな時でも声を出せる皆を尊敬する。
意思を、安否を、行動を伝えて安心させられる。
それが私にはできない。すぐに頭がいっぱいになって、声が出なくなる。
だからその分、必死に考えよう。
そのための時間は皆が用意してくれてるから。
まずは整理しないと。
敵の行動はわかりやすい。
目につく相手へ襲い掛かるだけ。
単体での危険度は低い。
脅威となるのはその数の多さ。
門の周りだけで何人いるのか数えきれないくらい居る。
今はジェイドが先頭で押さえてくれてる。一部兵士の人達も一緒だ。
その隙間からたまに押し出されてくる敵もいるけど、それは近くの人達が縄で縛ったりで対処してくれてる。
これをずっとずっと続けていられれば、最終的には全員を捕らえられる。理論上だけは・・・。
でもそれが現実的じゃないことはわかってる。体力もそうだし、縄だって足りない。時間もそんなにはかけてられない。
じゃあどうすれば―――。
押し返すなんて出来っこないし、そのまま引いたら決壊する。
ジェイドのためにも、早く事態を好転させてあげたい。
きっとジェイドはこうなったのは自分のせいだって思ってるから。
けど、本当はそうじゃない。
だって。
私が反対していれば、こんなことになってなかったはずだから。
私になんの作戦も無かったから、なにも思いつかなかったから、提案されたものをそのまま通した。それが本当の原因・・・・・・。
とにかくジェイドの代わりを用意しないと。
そうすれば―――ッ!
ピンと、旗が立つようなひらめき。
敵は・・・どうやって待機していたんだろう? これだけの人数が居るとわからなかったのはなぜ?
答えは簡単。
門だ。
門が閉まってたから、敵は出てこれなかったし、数もわからなかったんだ。
精神操作によって、どんな命令が出てるのかは知らない。
ただ、それほど複雑な命令は実行させられないんだと思う。
それは敵の動きからも明らかで。
とにかく門を閉められさえすれば、脱出の時間くらいにはなるはず。
問題は――、
「門を閉じれば・・・ッ!」
「俺様の代わりに出来るってことか!」
「そうね。やってみる価値はあると思うけれど・・・でも、どうやって?」
門の操作方法がわからないこと。
ここの門は手で押し引きするような門ではなかった。
開いた瞬間を思い出せば、門は上へ滑るように移動していた気がする。
ということは、そのための装置があって。それを動かす誰かが居る。
その装置がどんなもので、その誰かがどこに居るのか、探す時間は・・・無いと思う。
「キューティー‼ なんかそれっぽいのがあったりしねぇかッ⁉」
「見当たりませんわッ⁉ 壁に木の棒が生えてるくらいですわッ⁉」
「それだろ‼‼ 嬢ちゃん‼ 確か、見張りがいっちゃん最初に棒を引いてたはずだ‼‼」
「すぐに引っ張れ‼‼」
「お任せあれ、ですわ‼ ジェイド様のためとあれば! あ、よいしょっ‼」
「ちょっと待ちなさい―――ッ‼‼」
私達は幸運だった。
装置はすぐに見つけられた。
そして、ガシャンッ! という何かが外れる音。
どうやら操作されている誰かは、合図があれば開閉するように命令されてたみたい。開けるだけじゃなかったのもまた、幸運だった。
ただし、
「まだ離れる準備なんてしてないでしょッ⁉⁉」
エイラの言う通り、それらはあまりにも順調すぎた。
やろうとしたことが出来過ぎてしまった。
ガラガラと音を立てて、頭上からギロチンのように迫りくる門扉。
それは分厚い木の板と鉄でできた質量の塊だ。
直撃すれば当然、無事で済むはずがない。
「しまっ―――ッ⁉⁉」
見上げたままで動こうとしないジェイド。それは準備不足のせいなのか、それとも矜持のせいなのか。
咄嗟に、得意な魔法が出た。
バチバチと音を当てるほどの雷の魔法。
けれど、咄嗟過ぎて攻撃魔法じゃなく、防御魔法を出してしまった。
強力な雷の膜で魔法攻撃から仲間を守る雷魔法。
門を壊すことは出来なかった。門を受け止めることも、出来なかった。
それでも、私達は幸運だった。
雷の膜を素通りしたはずの門扉は、間一髪のところで引き返した。
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
「今よ‼ 早くしなさいっ‼」
「ッ‼ せーのっ‼‼」
エイラの声に呼応して、ジェイドが音頭を取る。
それに共鳴するように。敵を押さえていた全員が同時に強く押し返し――。
「ケイト! 門を下ろしてくださいな‼」
キューティーの呼びかけにハッとして、魔法を消す。
不自然に浮き上がっていた門扉はまた重力に引かれ初め、ドスンと地響きを伴ってその口を閉じる。
門扉が動きを止めたのは、多くの鉄が使われていたからだと思う。
私の魔法によって磁力を得て、引き寄せられたんだ。
本当に。
私達は幸運だった。