作品タイトル不明
side―――ジェイド
正直、舐めてた部分はあった。
住民全員が敵・・・だとしても。
たかが一般人を操ったところで大したことはねぇだろうと、甘く見てた。戦いになったら、負けるわけがねぇと。
「キューティー‼ 門の奥は見えるかッ⁉⁉」
「なにも・・・見えませんわ‼ 辺り一帯、人の海ですわ‼‼」
だが実際にはそうならなかった。
俺様達が出来たのは門に取り付くところまでだった。
見張りはこっちに気付くと、すぐに門を開いて援軍を呼んだ。
どうするか? なんて考えてさえいねぇ動きだった。
中から飛び出してきたのは兵士の格好をした奴ら。
十中八九、兵士だとは思うんだが。あまりにもお粗末な突撃だったせいで、格好だけだと言われても納得できるような相手だった。
エイラから強化をもらった俺様が突き進むことで、その恰好の奴らは押し出されるように左右にかき分けられ、堀に落ちていった奴らもいた。
その瞬間にキューティーが斬り込み、そこから全員で橋を渡って、残りの倒れてる連中をケイトの指示で預かった兵士が取り押さえて門に取り付いた。
そこが絶頂だった。
門には人が押し寄せてたんだ。想像を絶するほど。
処理できたのは雪崩出てきた最初の部分だけ。残りの詰まった人垣を突破する術はなかった。
数は力。
そんなことは蟻の時にわかってたはずなのに、強くなったという自負が、状況判断を鈍らせた。
戦いになんか、なるわけがなかったんだ。
「どうすんだよ嬢ちゃん⁉ こんなとこでなにやったって時間の無駄だぞ」
門から零れ出る敵を縛り上げながら、兵士の1人がケイトに言った。
様子見―――そういった以上、さっさと撤退しちまうのが正解だ。
なのに。
「今、下手に動いたら押し出さる。そうなると最悪、堀に落ちる人が・・・軽装ならまだ引っ張り上げられるかもしれないけど、皆さんの装備は――」
胸当てや兜は身を護るために鉄製だ。
手足や腰巻が革製だとしても、水に浮くことはないだろう。
堀はご丁寧にレンガみたいな石で綺麗に作られてる。落ちたら自力で這い上がるのは不可能に近い。
じゃあ脱げば解決か? なんて、簡単に捨てられるなら苦労はしない。
防具を付けてる意味は危険だからだ。外していい状況じゃない。
後から拾う余裕も無いだろう。
様子見なんて言わなきゃよかったか? いや、様子見するにしても。他に方法があったんだ。甘い考えで力技に頼ったのが悪かった。
「ジェイド! 強化魔法を掛け直すから、もうちょっと押さえてて‼」
「押さえるだけならいつまでだって余裕なんだよ‼ それよりキューティー‼ 戻ってこれるか⁉」
「せっ・・・まい、ですがッ! なんとかしますわッ‼‼」
どうにか奥まで確認しようとしたキューティーを呼び戻す。
その間、横にして持ち上げた盾を動かすことはできない。
それは当然、より多くの敵を1人で押さえるため。
この盾は2mに足りないが、横幅としては十分だ。なにより幸いなのは、操られているせいか敵の動きが単調なこと。
頭と手を押さえておけば大きな変化がない。
しゃがんで足元から襲ってくるようなことがねぇから、キューティーは逆に足元から奥への進攻を試した。
盾を下ろせないのは、その帰り道を失くさせないためでもある。
失敗は取り戻す! けどそれは、俺だけの力でじゃない。
仲間に頼ることの重要性も俺様は教えられたから。