作品タイトル不明
あっけのない理由
「そ、そうと決まったわけじゃないんだし、全部終わってから、確かめてみてもいいんじゃないかな? 僕みたいに、捨てられたって決まってるわけじゃないよ‼」
「そう、ですね。今は目の前のことをどうにかしなければ・・・」
無理やりすぎるヨハンの励まし。
自分の不幸を持ち出して比較するのは卑怯だと思わなくもねぇが、一緒に沈み込むよりはマシか。言われた方も困るだろうがな。
「それにしても、ですよ! 先生は良くあの人に勝てると思いましたね? なんというか、僕はそういう考えにもならなかったというか・・・ただただ聞かされるばっかりでしたよ」
そして間髪入れずの話題逸らし。気持ちはわかるが、強引にも程があるな。
しかし、そうだな。
「違和感があったんだよ。初めて見た時からな」
引きずっても良いことはねぇだろうし、やるべきことをやりながら、確認していくのもいいはずだ。
「違和感・・・ですか? 急に隣の部屋から出てきたのはビックリしましたけど・・・?」
「あぁ、いや。俺は前にもアイツにあったことがある。その時から、だな」
「そうなんですか⁉」
「学園が休止になる直前にな。それも当然、望福教の計画だったんだが――詳細は省く。ただ、戦う素振りがなかったっつーかな、そうならない状況を作ってるような気がしたんだよ」
言葉にして整理しながらだとわかりやすい。
以前も、今回も。
人質を取るような、似た状況なんだ。
「それだけで、ですか?」
「他にも。姿勢、表情、態度、視線、挙動、歩方、呼吸、位置取りなんかも注意してたが、どれもチグハグで・・・戦う想定をしてねぇ動きだった」
例えば、領主を上から見下ろし、のぞき込むような挙動。
両手は後ろに回し、顔だけを近付け、その迫力で押し込むような動き。
そこまでの表情や態度は攻撃的だったのに、これは明確に非暴力を訴えるような印象を受ける。
別に胸ぐらを掴み、吊るし上げながらでもいいはずだ。効力で言うなら、むしろそうするべきだ。その方が恐怖や絶望を身近に感じられる。暴力ってのはそういうもんだからな。
だが、そんな手っ取り早い方法を奴は取らず・・・言ってしまえば。非情に迂遠な方法で演出していたわけだ。
それが主義だったのかもしれないが、逆を言えば。暴力に頼らないのではなく、頼れないということにもなる。
もちろん、表面上だけの可能性もあったが、それは他の要素で否定できた。
「そんなに細かい所まで見ていたんですね・・・・・・その間、僕は何も。考えさせられるばっかりでした」
「あの手の奴は誇張した話しかしねぇんだよ。真剣に聞くだけ損だ。好きに喋らせてる間に必要な情報を集めた方が得になる」
「それじゃあ、わからない振りって言うのは・・・」
「気分よく喋らせるための手段だな。如何にもな態度で、拾ってほしそうにしてる言葉を聞き返すだけで、時間が稼げたりする。使いすぎれば逆効果になるけどな。今回は上手く刺さり過ぎた」
「確かに最後は吸い込まれるように・・・」
「相手の真似をしすぎたんだよ。ああいう手合いは対面相手の真似をして、神経を逆撫でにしたり同調させたりと、心理的な駆け引きをするわけだが、そうするってわかってりゃ利用もされるだろ」
その対策まで備えてりゃ、違った結果になったのかもしれねぇが、それは前提条件で否定されてた。
「そういうことも、覚える必要があるんですね・・・」
「そうでもねぇよ。対人戦なんざ想定しない方がいい。人を殺すことばっか考えるようになったら、人として生きていけなくなるからな。あくまでも、応用だ。モンスターにだって特徴はある。冒険者なら、そっちを覚えていけばいい」
話しながら領主を奥の部屋へ運び込み、そこにユノが結界を張る。
ついでとばかりに使えそうなものを漁り、都の地図を手に入れたので広げ、リミアと共に確認を進めた。
扉の外で動いていた気配が集まりつつある。
各自で突入してこないってことは、それなりに統率が取れてるってことだ。
それほどまでに操られてるってことでもある。