作品タイトル不明
あっけのない終わり
「窓の外、ですか・・・・・・薄暗いこと以外には、なにも――」
「―――悪いな」
言葉に乗って、窓の前まで歩き、外をのぞき込む男へ向かって、放つ。
謝罪じゃなく、石弾を。
腕を伸ばし、籠手に魔力を込め、モンスターを攻撃するための石弾を放つ。
人へ向けて。
「~~ッ⁉⁉」
男は振り向き様、必死に手で身体を守るように隠すが、そんなことで防げるほど弱い威力はしていない。
モンスターさえ殺すつもりの攻撃。
差し出された掌を突き破り、身体をも食い破り、窓すら穿ってその先へ。
どこまで飛んだかはわからねぇが、目的は果たした。
「な、ぜ・・・―――」
言葉を残すことも出来ず、男は窓から落ちていく。
一瞬の騒音。そしてまた、静寂が横たわる。
それなりの音や振動、地面には強かに打ち付けられた男の身体があるはずだが、それによる異変は起きそうもない。
それほどまでに、精神操作が影響しているということだ。
もはや、意識を保っている住民は居ないのかもしれねぇな。
「・・・先生」
ヨハンは僅かに迷い、言葉を選んで続けた。
「どうして謝ったんですか?」
「別に。アイツに謝ったわけじゃねぇよ。あんなくだらねぇ奴の死に様を、お前らに見せることを謝っただけだ。それと、後が面倒になることもな」
「僕らに? それに面倒って・・・」
「精神魔法による操作は未だ、解除されてはいません。それが可能だったのは、あのお方のみ。ゼネス様はその手段を捨てることを私達に謝罪されたのでしょう?」
ユノが状況を察して代弁する。
「まぁ、そういうことだ。すぐに追手も来るみたいだからな」
「それは、その・・・リミアのお父さんじゃ・・・」
「無理でしょう。父は何もわかってはいなかったのですから、対抗手段など備えてはいないでしょう。信頼についても・・・・・・」
精神魔法を打ち破ることはできずとも、関係の深い相手を目の前にすれば、動きが止まることはある。隙を作れるなら十分価値も見込めるが、それさえ。リミアには見いだせなかったっつーことだろう。
「どうする? 置いていくにしても、危険がねぇとは言えねぇが・・・?」
「そちらの扉の奥の部屋。行き止まりになっていますので・・・そこへ運び、それから結界をお願いしても? それでダメなら、もう・・・・・・」
「それで、いいの? リミアはまだ僕と違ってその、捨てられたわけじゃ、ないんでしょ?」
「どうなんでしょうか。私に求められていたのは、道具としての役割だけだったんじゃないかと・・・ここまでの会話で思い知ったつもりですが」
「だってほら! まだお母さんがどう思ってるかはわからないはずだよ⁉ 僕は誰にも望まれてなかったけど、リミアは――」
「お母様とはほとんど。直接会ったことがないのですが、それでも?」
「それは・・・、事情があったわけだし・・・」
「すみません。どうしても、知りたかったんです。きっと。どうしてこうなってしまったのかを。だから教会へ―――でも・・・」
そういえばリミアから聞いた手記の話でも、母親からの視点は皆無だった。
それに、生まれるまでの過程も聞いた覚えがない。
父親目線の歓喜は伝わってきたが、それによって母親が、あるいは夫婦の関係がどう変わったのかはわかってない。
もしかしたら、なんて言いたくはねぇが。
ほとんど会わなかったのは、興味が無かったからなのか?
リミアがそのことを疑問に思って過ごしていたのなら、それは随分と――虚しい道を歩いてきたってことに。