作品タイトル不明
極上の嘘
「お母様に降りかかった事象が、それほどまでに許しがたかったというのは理解していますが・・・・・・それを理由に思想の書き換えまで許容出来るとは思いませんでした」
暗雲立ち込めるような口上。
言葉通り、雲行きが変わる。
「ち、違うぞ⁉ リミアよ‼ 私は――ッ‼‼」
「何が違うというのでしょう? 私の耳には間違いなく、蛮行を止めようとする言葉は聞こえて来ませんでした。ましてや、その対象が私自身であると聞かされて尚です。もう一度訊きますが、何が違うというのでしょうか?」
「それは・・・だな・・・」
明らかに狼狽えながら、
「そう! そうだ! 私達には害がないからだ。現に、この領地では加護教を信仰してはいない。であれば! そういった教育を受けても、何ら問題はないということだ!」
それでもどうにか言い訳を探し出す。
しかし、
「それに関しては誤算でした。ああ、この領地に限った話ではなく。単純に。皇都貴族であれば親元への連絡も容易いですが、地方貴族の子供となると、どうしても時間が空いてしまうどころか、連絡手段も直接ではなく手紙などになりますから、思ったほどの成果が出なかったのですよ。本来なら、貴方にも。もっと早い段階からご支援願いたかったのですが・・・」
「ということであれば、資金的な害はあったと予想されるわけですが――」
ぶしつけな男の割り込みによって潰される。
「なぜ今そんなことをッ‼‼」
「いえ、実際失敗したなと。反省しておりましたので。上手くいっていれば、このようなやり取りは生まれなかったはずだと」
男は楽しむようにうそぶく。
追い詰められる父親と、それを冷たい視線で睨む娘。
見世物にして喜べる代物かは性根に寄るだろう。
あの男にはそれが出来る。そんな確信があると共に。疑問も浮かぶ。
趣味趣向だけでこんなことをするのか? という疑問が。
「私は初めから宗教という物を疑っていました。その上で、皇都で加護教についても調べましたが・・・学園内で知れることはあまりに少なく。教会やその周辺で得られることは表面でしかありませんでした。私は私の知りたいことが知れないまま。卒業までを迎えました。なので、修道女として教会へ属そうとしましたが、それを止めたのは他ならぬお父様でした」
「当然だ‼ 妻と、リーリャと同じ目にあってほしくなかったからだ‼‼」
「それは嘘ではないのでしょうが、そのために私は行き詰まってしまい、今でも真相を知らないまま・・・」
「真相などッ‼ 加護教とは女神という言葉を使い、ただ私腹を肥やすだけの―――」
「では望福教はそうではないと?」
「・・・少なくとも、加護など問う不確かなものを基準に女神という存在を語ったりはしない。なにより、教祖には人を引き付けるだけの力がある」
「それが何かわからないのであれば、それも不確かなものなのでは?」
「だが人のものだ! 神のものではない‼」
「神のものではないのかも知れませんが、人のものでもない。それが私の、私達の答えです」
「なんだとッ⁉ どういう意味だ!」
「望福教の教祖は竜の力を使っています」
「竜の―――? いやしかし、それも実在するからだろう⁉ それも! 使役できているならば―――ッ‼‼」
「その竜の力は、人から加護を奪うそうです」
「―――は?」
窓の向こうから影が差す。
一段と暗くなった部屋の真ん中で、男は顔を覆い、笑いを噛みしめていた。