作品タイトル不明
薄情の現実
「待て⁉ どういうことだッ⁉」
「おや、こちらは振りではありませんでしたか。しかし困りましたね。これ以上どう説明したものか・・・」
「なにをしていたのかを訊いているのではない‼ なぜ、そんなことをしたのかを訊いている‼‼ 私はそんなこと―――」
「だから、教えたでしょう? 精神魔法により、人を操作するためですよ」
「~~~ッ‼‼」
唯一の爵位持ちであり、この場では最も偉い領主という地位であるはずのダミアンは続く言葉を紡ぐことも出来ず、口を開け閉めするばかり。
「宗教を変更させるなんて芸当が、そんな簡単に行えるとでも? 貴方自身。苦労の末、手の届く範囲で諦めたはず・・・・・・」
「そんなことを頼んだ覚えはない!」
「そうでしたか? ですが、加護教を捨て望福教へ入信した皇都貴族を見て、内心嬉しく思ったでしょう? 自分が正しかったと、そう確信したのでは? 加護教は助けてくれないのだから、当然だと。声高に叫んでいたのでは?」
「ッ⁉⁉ それはッ‼‼」
「なにもおかしくはないですよ。加護教は助けてくれない。そこに嘘はない。だから教皇という冠を亡くしたのでしょう? 女神は居なかった。あるいは、居ても施しなど与えはしない。そう思いませんか?」
男は主張を全面に押し出しながら、ユノへ尋ねる。
「―――――・・・・・・」
「どうです? 事実は認めなければならない。彼女の沈黙さえ、正に解答だ。ですから、頼んだかどうかは問題ではありません。貴方の望むとおりに我々は動いた。そして結果が伴った。であれば、認めていただかなければ!」
「正しい行いをした。そう主張するつもりならば、初めから知らせておけばよいだけのこと! そうだろうッ⁉」
「では、お伺いしますが。説明があれば止められたとでも・・・? いえ、それどころか! 止める理由があったんですかね?」
「なにを――ッ⁉」
「聞いていないから、なんです? 知らなかったから、なんだというんです⁉ わからない振りだというのなら答えてもらいましょう‼ そっちの怖いお方は振りをする度、律儀に返答までしてくれましたよ? さぁ! さあ‼ ルーフロンス男爵閣下! 貴方が我々の教育という方針を拒まなければならなかった理由、是非とも聞かせていただきましょう!」
期待に満ちた目で領主に迫る男。
なんでこんなもんを見せられてるんだという思いが溢れる。
誰にも興味のない話―――・・・。
「・・・・・・いいや、ただ不測の事態を考えて―――」
その言葉を聞くまで、確かにそう思っていた。
「そうでしょう‼ 貴方にとって重要なのは‼ 復讐をおいて他にない‼‼ 我が子の安全よりも‼‼ その未来などよりも‼‼」
盛大に振り上げられた腕は、領主の言葉を待つより早く、関係を断ち切るように振り下ろされる。
その指が指し示す先に居るのはリミアだ。
諦観と失望を含んだ瞳で沈まぬ太陽のような眼差しをしていた。