軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

恒常の嘘

驚いているのは俺だけじゃない。

リミアやヨハンも、領主でさえ。

「気付かないのは無理もない。なにせ、担当したのは入学直後の2年だけ。今から数えれば、それはもう随分と昔だ。ですが―――何事も初めが肝心。違いますか? 故に、私達は多くの段階を踏んで来た。まあ? 少しばかり失敗があったことは認めるべきかも知れませんが・・・」

リミアを見下すように視線を送りながらの言葉。

狙いが外れたってことなんだろうが、学園での洗脳教育の失敗ならリミア単体を見たりはしねぇはずだ。っつーことは、教会への興味だとか、そんなところか。

「失敗・・・? いや、それよりも教師だとッ⁉」

問い詰めるように声を上げる領主ダミアン。

「あなたのご要望通りのはず・・・なにかご不満でも?」

「私の、だとッ⁉ 私がいつ学園への介入など頼んだ‼」

「わかりませんか? そんなはずがないでしょう。それとも、貴方もわからない振りがお好きなのですか?」

やれやれ、と呆れるようにしておいて、『それもいいでしょう』と説明を続ける。

「加護教への懐疑。それを健在化させたい。それが貴方の望みであったことは否定しませんね? そのためにするべき事とは何か? それは認識の共有と増幅に他ならない。同じような疑問を持つこと、更には真実を追求しようと思うだけの心理が働かなければ、人は流してしまう」

「それがどうして―――」

「学園での教育に繋がるのか? それはとても簡単な話でして・・・、親は子供の疑問には答えなければならない。特に貴族の親は、面体というものを大切にしなければならないと、普段からそう教えているのだから逃げられない。なので、子供にこう言わせればいい」

『どうして皇都では望福教じゃなくて、加護教が信仰されてるの?』

あまりにも容易い想像だ。

質問をする子供の顔も、質問された大人の顔も。嫌なほどによくわかる。

ついでに、その結末も。

『そういうものだから・・・』

「ほとんどの親はこう言うでしょうね。それが答えになど、なるはずがないのに。貴族の子供は幼少期から多くの情報を与えられ、品位や作法を叩きこまれるもの。しかし、宗教まで教えられることはほとんどない。あくまでも自然に、寄付しているということを教える程度・・・なぜか? 傾倒されては困るからでしょう」

このルーフロンスでの癒着を知っていれば、なんとなく理解できるだろう。

莫大な金が流れれば、余程高潔な人間でもない限り、その性根は腐る。

それが組織ともなれば、腐敗を逃れるすべはないといってもいいほど。

体裁のため、ほどほどの付き合いをする。貴族にとって宗教とはそういうものであることが多いのは事実だ。

「ですが、賢い子供達は自分で考えることができる。大人には及ばなくとも。知り得た情報を基に判断する。何が正しいのか―――と。そこに大きな罠があるとも知らずにね」

「学園ってのは知識を学ぶ場。もっと正確に言やぁ、教師から一方的に情報を受け取る場所だ。その情報が正しいかどうかを判断するのは教師であって、子供であることなんざあり得ねぇ」

「そういうこと。やっぱりわかってるじゃないですか! どうしてわからない振りなんかが好きなんです? 授業の中で宗教についても教えてしまう。嘘を吐く必要なんてなく、ただありのままに。けれども都合のいいように。望福教のいいところと加護教の悪いところを教えるだけで、さっきのような言葉を引き出す事ができる」

「そんな言葉が飛び出た時点で、普通なら何を教え得るのかって話になるはずだが・・・」

「私達は学園全てを掌握してから行動を始めたので、新しい取り組みとして納得していただきましたよ。精神魔法の面倒なところ、信用を得る前段階。それを丸々学園へと転嫁することで、いともたやすく子供達を媒介に出来る。その予定だったんですがね・・・」

今度も、俺から外された視線はリミアへと向かい、それから領主へと結ぶ。

そこに意味があるとすりゃぁ、誤算の計上とでも言えばいいか。