作品タイトル不明
優越の無実
「いやー! よく調べましたね?」
昂揚を隠しきれない笑みで一言。
否定も訂正もないってことは、正鵠を射たか。
望福教の教祖は龍王が話に出した加護を奪う竜で間違いねぇようだ。
「・・・・・・加護を・・・奪う?」
「でもねえ! もう遅いんですよ‼ 今さらそんなことを知ったところで、間に合いはしないんですよ!」
「・・・仕組んで、居たのか・・・⁉ 全てッ⁉ あの悲劇さえもか⁉⁉」
「あー、勘違いしないでくださいね? 我々がやったのは、加護を奪いさることだけ。教会の腐敗や周囲の反応の変化などには、一切の手出しをしていませんからね。本性は何も変わりませんよ」
「そんなわけが、ないだろう‼‼ 加護のLvが下がりさえしなければ‼ 彼女が追い詰められることはなかった‼‼ 私とて! 多くの縁を切り捨てる必要など――ッ!」
「ああ! それも大間違いですよ。彼女・・・リーリャさん? でしたっけ。あの人は元から、望福教の人間です」
聞きたくはなかった真実が告げられる。
「・・・はあ?」
それに追いすがるように、椅子が床を擦ったような音が続く。
それが人の喉から発せられたものだと認識するまでに、僅かな間を要した。
「驚きました? といっても、あくまで”元”信者というだけですけれど」
「お母様が元信者だというのであれば、心からの願いがあるはずですが?」
止まった領主とは裏腹に、リミアが男へ食い下がる。
しかし、
「聞きたいですか? どうでもいいことですよ?」
「私にとってもそうとは限らないでしょう?」
「いいえ? 貴方にとっては最もどうでもいい話ですよ」
「その自信はどこから・・・・・・」
この男はすべてを知っていた。
「ただの事実ですよ。だって、貴方は加護のLvなんて気にしてないでしょう? 昔から、今までずっと」
「それが――」
「そう! それが貴方の御母上の願い。加護Lvを上げて欲しい! 彼女の加護Lvはある日突然、失われたわけではなく。元々、周囲の人間から吸い取って維持していたに過ぎません。加護を奪うという加護を、教祖様に賜っていただけです。そして、教祖様から遠く離れ過ぎたが故に、その力が失われてしまった。実に簡単な話でしょう? それともう1つ。我々は彼女を追放した覚えはありません。彼女は自分の意思で、望福教から去り、元信者となったのです」
つまり、事の顛末はこうだ。
リミアの母リーリャは、加護Lvが低いことを嫌っていた。
そんなある時、願いを叶えてくれる宗教として望福教の存在を知った。
その門戸を叩き、教祖からその力の一部である加護を吸収する能力を分け与えれられた。
結果、周囲の人間から加護の力を吸い上げることで、自身の加護が上昇し、願いが叶ったからと望福教を離れ、上がった加護Lvを有効に利用するため、今度は加護教へ入信した。
そうしてしばらく。勝手を通すうちに、与えられた力が失われたことで、加護Lvが下がった様に見える現象が起きた。
強かといえば間違いねぇが、それにしたって―――。
「そんなの・・・・・・自業自得じゃないですか・・・」
零れるように呟くリミアを支えられるものはなかった。