作品タイトル不明
結策3
「いや、相手が対応しようとしてきたら、その瞬間に引き返して欲しい」
「尻尾撒いて逃げるのかよ⁉」
「そうだ。言っただろ? 嫌がらせだ。上手く南門まで引っ張って来れれば、中央で渋滞を作れるはずだ」
「渋滞? どうやってだ? この中央の広場は馬車でも行き来が簡単に出来るんだろ? 人が多少集まっても詰まったりはしねぇんじゃねぇのか?」
「流れが一直線ならな。兵舎から東門へ移動してる隊列を横から攻撃すれば、攻撃された奴はもちろん。その前後の奴らも反応せざるを得なくなる。後ろはまだしも、前の奴は逆走だ。それを咎める奴も出てくるだろう。そいつらが来た道を戻るお前らに追いすがろうとすれば―――・・・」
「そうか・・・広場と南側に続く道の間で詰まる・・・」
「そういうことだ。負傷者の救助なんかも考えれば、中央を封鎖出来るかもしれねぇな。そうなった場合、東へ進む列は北側に膨らんで移動する他なくなる上、南側へ送る戦力の確保も急務になれば、中央付近での動きは鈍化。欲を言えばここで北側からも挟撃したかったが、出来る奴がいねぇからな」
中央を塞ぎつつ上下へも移動を余儀なくすれば、じゃぁ東にはどうやって兵を送るんだ? っつー状態にできたんだが・・・ないものねだりだな。
「ケイトに預ける20人は、この後の南門を占領し続ける戦力として使え。具体的には南門を襲撃する時に稼働させて、占領出来たら部隊は南門に待機。お前ら4人で強襲を行い、南門で部隊と合流して遅延だ」
「門を占領って・・・東側は80人でやるんだろ⁉ なんでこっちは20人なんだよ⁉ 俺様達に期待するのはいいが、高く見積もり過ぎなんじゃねぇか? まあ、出来なくはねぇけど? 理由ぐらい聞かせてもらわねぇとな」
「さっきも言ったが目的の違いだ。東側は敵を誘き寄せるのが目的だ。そのためにある程度の戦力を見せておく必要がある。それこそ、少人数だったら一気に打って出て取り押さえた方が――! なんて意見が出てくるだろ? こっちは援軍を待ってる振りをしてるんだぞ。押し出されるのが一番まずい。逆に南側は少人数だと誤認させて半端な数を引っ張るのが目的だ。例えば、3倍の12人で取り押さえるつもりで臨時編成を組んだとしても、南門には20人が控えてる。お前らが合流すりゃ相手の倍の24人。ハッキリ言って無駄骨だ」
小規模でも、複数の敵を素早く制圧したいなら、相手の3倍程度の人手は欲しい。しかし、72人を即席で動かすのは難しく、この町とも相性が悪い。
そう考えるのは住民だからこそ。故に4人を見ても待ち伏せを疑わない。
待ってられる程の地形が無いと判断するからだ。
むしろ、脇道の事を知ってしまっていればこそ。少数人での襲撃の方が、あり得ると思ってしまうだろう。しかも、ジェイドの装備を見て。南門まで一目散に逃げられる、なんざ考えつかねぇだろう。馬鹿みたいにデカい盾を持ってんだからな。
「私達が追いつかれる・・・とは考えてないのかしら?」
「すっ転んだりしねぇ限りは大丈夫だろ? 身体強化も慣れてるはずだ」
「もちろんですわ‼ あの霊峰での活躍はマグレではありませんことを証明させていただきますわ‼ ああでも! ケイトはお気をつけなさい? 結構転んでましたわよ⁉」
「だ、大丈夫! 多分、大丈夫・・・」
うっすら不安を募らせるケイトに、キューティーが『やっぱり普段から、もっと運動をしておくべきではありませんの? こう本を重りに――』とかなんとか、身振り手振りする。
それにケイトが『本は知識を蓄えた努力の結晶で、それを――』と言って反抗している隣で。
「俺様の役割は重要なのか?」
「そりゃぁな」
「期待してるってことでいいんだよな?」
「当然だ」
「・・・そうかよ。だったら手伝ってやるよ! その代わり、約束‼ 忘れんじゃねぇぞ‼‼」
ジェイドは高らかに啖呵を切る。
実際に、この陽動は決まらないと困る。窮地に陥ると言えるだろう。
期待しているというのは本当だ。
・・・・・・なら、嘘のように思ってるのは何か?
約束って何のことだ?