作品タイトル不明
影引く未知
ルーフロンス。
ガルバリオ皇国の東側に領地を持つ地方貴族であり、爵位は男爵。
領地としては平凡であり、目立った動きなどはなかったはずだ・・・近年では。
どういう意味か?
話題になったのは十数年前のことだ。
ルーフロンスは爵位が男爵から子爵へ繰り上げられるという運びとなったことがあった。
その功績は確か、回復薬に関係する何かだったと思う。
生成方法か効果上昇か。いずれにせよ、大きな発見があったんだ。
当時はまだ駆け出しだった俺達にも恩恵があったことは覚えている。
つっても回復薬の値段が僅かに下がっただとか、その程度だったが・・・怪我を治すぐらいのことは魔法で出来たからな。あんまりそこら辺のことを詳しく覚えてないのはそのせいだろう。
しかし、ルーフロンスはそれを固辞した。
当主を代替わりさせてでも―――。
そんなことがあるのかと、俺やクライフでも驚いたぐらいだ。
「ですが、それは嘘です」
そう言って否定するのはルーフロンスの娘であるリミア。
「どこが嘘なんだ?」
「代替わりをさせてでも―――の部分です」
「つーことは、爵位の繰り上げを拒んだのは・・・」
「父です」
現領主ダミアン・ルーフロンス。
この言い方からして、祖父の方には断る理由はなかったってことだろうな。
「ちょっと待った! アンタのお父さんはなんでそんなことをしたんだい? というか、アンタはなんでそんなことまで知ってるんだい? アンタが生まれる前の話なんじゃないのかい?」
質問で遮ったのはケイだ。
部下の面倒を見てなくていいのか? と言ったが、『野営ぐらい自分達で出来るだろうさ』と流された。
問題はそこじゃねぇだろ、と。
仲間意識や上下関係を強く意識させるために時間を共有しなくていいのか、と。そういうつもりで訊いたんだがな。あくまでも貧民街のまとめ役つーか、それさえ上手くいってなかったってのに、どうにも軽い気がするんだよな。
ただまぁ、気になる点は変わらねぇし、ここで爪弾きにする必要もねぇだろう。
「確かに私が生まれる前の話ですが、全ては父の手記に書いてありました。祖父を追い落とした理由も、爵位を辞退した理由も・・・父が加護教を嫌う理由も、全て」
「加護教を嫌う理由がここで出るってことは、それが原因か」
「・・・はい。発端は母にありました」
区切りをつけてリミアが語り出したのは、父ダミアンと母リーリャの出合いから始まる悲劇の物語。
そして、そこから現在へと続く物語であった。