作品タイトル不明
満ち引く影
「それで、これからのことなのですが・・・」
「教祖について、何かわかったのか?」
「えーっと、噂程度ではあるのですが、その――」
ユノは歯切れ悪く、時折視線を迷わせる。
その視線の先に居るのはリミア。
そういえば、教会の話をしていたのにリミアが食いついてこなかった。
普段ならもっと知りたがってもおかしくはない、そう思うと共に。ユノの言いたいことも理解した。
「ルーフロンス領か」
「――ッ⁉」
「・・・はい。前線への補給がどこから送られてきているのかを、北からの応援部隊の一部が調べたそうで・・・」
兄上だな。
わざわざ意を汲んで調べてくれたらしい。
「やっぱり・・・・・・そうなんでしょうか? 父は・・・」
「どうだろうな? 騙されてるだけかも知れねぇし、もしかすりゃその振りの可能性だってある」
「父は母の件で教会、ひいては加護を有難がること自体を疑問に思っていました。なので・・・」
「そうか、そうだな。だが、心酔してるとも限らねぇだろ」
「そうだと良いのですが・・・」
下手な慰めで余計なことを言わせちまった。
何も知らない子供なんかじゃないんだ。
親の思想や過去の事情を知って、だからこそ教会の内側を知ろうとした。
何も知らないままでいたくないから。
そういう性格だと、知っていたのに。
「ルーフロンス領からは前線を維持出来るだけの兵站が送られてたのか? それとも、他領と比べて量が多かった程度か?」
「詳しいことは私にもわからないのですけれど、物資は全てルーフロンス領から送り出されていたそうです。一度、物資をルーフロンス領へ運び込んでいるのかも知れませんが・・・教祖、あるいは。その指示を受ける指揮官が居ることは間違いない、と」
「誰から聞いたんだ?」
「ゼネス様のお父様から」
御父上か。
そういえば、御父上も精神操作の被害者だったな。
その時はグレンゼーが隣に居たんだったか。
帝国の姉姫の隣にも、従者として侍らせてたな。事情は違ったが・・・。
「領内の情報は何か聞いてるか?」
「いえ、厳重な警備が敷かれていたそうで。侵入は躊躇われたのだとか」
「警備の様子は?」
「不審な点はなかったと聞いています。ただ・・・」
「ただ?」
「軍隊式の所作を確認したと」
「軍式・・・」
皇都の様子を聞く限り、戦線は膠着状態にある。
それが長引けば不利になるのは攻める側だ。
兵站を運び込むのに距離があるからな。
それに相手は皇国軍。その名の通り国軍だ。
背後に控えるのは国そのもの。物資調達の難易度も違えば、資金力も違う。それこそ、天と地の差と言えるだろう。幾つか集まった地方領とでは比べるまでもない。
にもかかわらず、兵隊を警備に回す余裕があるか?
所作を確認ってことは、交代なり見回りから露見してるはず。
しかも厳重って言えるぐらいの人数を割いてる。
最後の砦っつー可能性もあるだろうが・・・・・・鍵か。