作品タイトル不明
side―――ケイ
マズったね。
領主捕縛の報告を受けた後、招集をかけた辺りから不安に思っていたけど、二極化が目立ち過ぎる。
命令通りの行動しかできないのと、命令を通りの行動さえもできないの、どちらがマシかと聞かれりゃ前者なんだけど、どうしてこんなに差が出るんだい?
しかも、お互いが意見を押し付け合う最悪の状態じゃないか・・・。
事の発端は金品をかっぱらってきた連中がそれを自慢しだしたこと。
元は街中で騒ぎを起こして住民の注意を引き付けるためなら、略奪行為にも目を瞑るって話だったのに。それをそっちのけで金品を漁った成果を堂々と宣言するもんだから火に油だ。
街中を駆けずり回って怪しい人物の操作に当たってた真面目な連中が爆発した。
『自分達の立場も理解できないのか‼‼』この言葉に全てが詰まってたね。
その通りさ。あたしらは試されてる。
捨て駒にするべきか、否か。
それはゼネスの旦那だけじゃなく、南の辺境伯である叔父様からも。
だから実直に動くべきだって。
言ってたんだけどね・・・・・・。
『俺らも命令通り略奪しただけだし?』と来たもんだ。
そこからは収拾がつかなくなっちまったからね。しばらく罵詈雑言が飛び交う無駄な時間が流れた。
にもかからわず、新しい役目の割り振りが一向に決まらない。
奪った金品を領主と一緒に。領都セイルスルーへ運ぶってのが、どうにも気に入らないらしい。
報酬の横取りだなんだと喚き散らす。
頭が痛くなってくる。
いや、あたしも悪かったんだろうけどね。他にどうしろってんだい?
横取りだと騒ぎだしたのは割り振り内訳が露骨過ぎたからかもしれない。
要は真面目だった連中を領主の護送に選び、略奪に走った連中はこのまま戦地に残る振り分けが納得いかなかったってこと。
とはいってもね。命令を聞けない、好き勝手に解釈するような連中を重要な護送なんて役割に当てられるはずもないんだ。
そんなことをいつ決めたのかって話なら、無駄な時間があっただろう? そういうこったね。
そして、それを黙らせる方法もなんとか考えた。
それが目録を作ること。
自分が奪ってきた金品を紙に書かせて全員の前で預けさせる。
こうすることで虚偽を防ぎ、且つ贋作を指摘することで書き直しをさせられた。
あからさまに偽の宝石をあしらわれた装飾品も、その場で指摘すれば周知出来る。当人の文句さえ周りの略奪班が、からかい囃し立てるおかげで長引かずに済む。
この閃きには我ながら冴えてると思ったんだけどね。
下げる頭の価値を落とすような態度と声が後ろから聞こえるまでは・・・。
これほど顔を上げるのが怖いと思ったのは、いつ以来だろう?
子供の頃にタンと悪戯をして、叔父様が大事にしていた壺を割った時か。それとも、初めて先代鼠の王と対面した時か。
ていっても、怖さの質が違うんだけどね。
怒られるのが怖いわけじゃない。初対面が故の恐怖心でもない。ただ興味を失われることが怖かった。それが戦場において、命の重さに直結するから。
意を決して前を向く。
その感想こそが―――・・・マズったね。
つまり、そういうことなのさ。