軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――ヨハン

あんなことを言ってはみたけれど、それが強がりだったことを痛感する。

人が亡くなる瞬間を目の当たりにして、何も思わないわけがない。

その上で、上階を選んだのは悪手だったと後悔もした。

「ぉぇ―――・・・・・・」

『にくのやけるにおい』そう聞くだけなら、おいしそうだと思えるかもしれないけれど、それが『 人(にく) の灼ける臭い』となれば話は別だ。

立ち昇る煙にはその臭いがより多く含まれ、そして煙は高く昇るのだから上階は余計にその影響を受けた。

胃から競り上がってくる衝動をどうにか抑えつつ、中庭を見下ろす。

もう何人もが突然に燃え上がり、黒いシミのように地面を浸食している。

夜空より足元の方が明るくなっていることが、その事実を強く物語る。

誰かもわからなくなるような殺し方。

多分、先生が僕のために出来る最後の配慮なんだと思う。

でも、あんなのは地獄そのものだ。

焼けていても死ぬまでには時間がかかる。

その間に感じる苦しみは、声を通して伝わってくる。

何かが違えばこうはならなかったのか?

情けない僕が尋ねている。

けれど、そんなこと・・・わかるはずもなく。

霞む視界で。揺らぐ景色を。ただ見つめる。

きっと煙が目に染みただけ。

そう言い聞かせながら、目に焼き付けた。

唯一僕に出来たことの中で良かったことは、先生の近くに居なかったこと。

遠くからじゃ先生の表情もわからないけど、近くでこんな顔をしてたら困らせちゃうはずだから。

いつまで、こんなことが続くんだろう・・・・・・。

援護のことなんかすっかり忘れて、ぼうっと眺めていると。

膠着が生まれて居ることに気付いた。

あれほど。ただ直進を繰り返していた暴徒にさえ、理性が戻ったんだ。

考えもなしに前に出ても二の舞になるだけだって。

恐怖がそれを植え付けたんだ。

誰も、何も言わず。

パチパチと草木が燃える音がここまで聞こえてくる。

どうするんだろう?

素朴な疑問が浮かんだ。

どうして先生は待つのか?

それは敢えてそうしてるんだと分かる。

例えば刃物を持つ人と敵対した時、いつ来るのか? どこを狙うのか? どう動くのか? わからないことを考えている時間が一番怖いから。

これはモンスターと戦う時も同じだった。

生殺与奪の権利を一方的に握られている感覚っていうのは、どうしようもなく不安を煽る。

先生はその時間を引き延ばすことで精神的に消耗させようとしているんだ。

それは誰の、に限らず全員の心を折りに行く選択。

諦めは伝播する。

だから1人でもいいから勝負から降ろさせたいんだ。そうすれば、おとう――いや、領主の心にも突き刺さるはず。諦めという毒が。

なら、警備の人達や暴徒となった市民は、なんで動かないんだろう?

正直に言って、待っていたからって何か解決するとも思えない。

先生がどうやって人を燃やしているのかさえわからないんだ。対抗なんて出来るはずもなければ、思いつくわけもない。

なのに待っているのはどうして?

何に期待しているんだろう?

この状況を・・・先生との立場を逆転し得る何かって―――ッ‼‼

そこまで考えてバッ‼ っと振り向く!

当然そこには誰も居なくて。

ホッと一息、胸を撫でおろす。

僕の存在を鍵としていたわけじゃなかったのか、あるいはまだ探しているのか、わからないけれど。

今、窮地に立たされているのは僕じゃなかったみたいだ。

僕が先生の弱点になる可能性なんて、考えてもなかった。

自分の存在が知られていることを忘れてもいた。

先生の背中が遠すぎて、当事者であるという意識が薄れていたんだ。

気を引き締めないと、ただ見つめているだけじゃダメだ。

そんな言葉を頭で唱えている間に、窮地はやってくる。

「オラッ‼‼ さっさと行け‼‼ ガキ共‼‼」

中庭から聞こえてきた声。

そこには子供達の姿がある。

僕と同じ理由で捨てられたであろう子供達の姿が。

ただ見ているだけなんてダメだ‼‼

でも・・・・・・。

僕になにができるって言うんだ―――・・・ッ⁉