軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

上がる狼煙が呼ぶものは6

隣の部屋には窓がなかった。

外からの侵入に配慮してのことだろう。

隠されている可能性もあるが、一目で分かるような扉はない。

そこに警備が1名―――・・・。

「先生⁉ 急に絨毯を剥がして、どうしたんですか⁉」

「どこかに通路があるはずだ。ヨハンはわかりやすい部分を探してくれ」

「えっ⁉ あ、はい‼ 机の下とかでいいですかね⁉」

気絶させた警備を端へ追いやっての捜索。

ここにいる警備は自分が何のためにここに居るのか知っていただろうか?

コイツは最終防衛戦なんかじゃなく、安い警報装置の代替品だ。

上にも空間がある中で床だけを捜索するのは、それが分かったから。

上層階からの足音は意外なほどに響く。

取っ組み合いとなれば尚更だし、人が倒れようものなら気付かないはずがない。

下に居ればそれらの音に一早く気付け、隠遁でも逃走でも好きに選べる。

地下に通路でもあれば完璧だろう。

「先生! こっちに!」

呼ばれた先にあったのは腰高の棚。

大きく外側に偏った取っ手が印象的だ。

「この引き出しがあかないんですよ! なにかあるんじゃないかと思って」

床を調べてくれって言ったはずなんだが・・・まぁ、気になるのもわかるぐらいには目を引くのも事実。

なにより、異変を見つけたんだから咎めたりはしねぇが。

言われて引っ張ってみるものの、微動だにもしない。

顔を近付けてよくよく見てみれば、

「こいつは飾りだな。引き出しなんかじゃねぇ」

そこには取っ手がついているだけ。

「え⁉ でも下は開きますよ⁉ なにも入ってませんけど・・・」

そう言いながら下部の両開きになっている扉を開くと、

「あ、本当に飾りですね! 引き出しの部分も空洞になってる」

さらに覗き込んで飾りの裏側を見たようだった。

なぜこんな飾りを? という疑問も尤もだが、何か違和感がある。

本来あり得ないような・・・・・・。

「アレ、なんですかね?」

まだなにかあったのかと思いヨハンを見ると、床に顔をつけて棚の下まで覗き込んでいた。

渋々同じように覗き込み、ヨハンが指さす部分を確認する。

そこには――影があった。

いや、影ぐらいはあって当然なんだが・・・より正確に言うなら、脚つきであるこの棚の、その脚の部分の影だけが一層濃く壁に刻まれているように見えたのだ。

そこで先程覚えた違和感の正体に気付く。

すぐに体を起こして天板を水平から覗く。

結論から言えば、ここにも影があった。

けれどそれは影ではなく、隙間だった。

脚の影がより濃く見えたのはそれが奥に広がる空間だったから。

この棚が空なのは重くならないように。

取っ手が付いた引き出しが飾りなのは棚ごと引っ張ることが目的だから。

であれば、隙間があるのは当然・・・!

「随分ふざけた仕掛けだな」

棚を奥へ押し込むと、壁にめり込むようにピッタリと収まり。

カチャン! という、なにかが外れるような音をもって床が落ちる。

落ちたのは逆側の床。

そこには1m四方の穴が開いていた。

上から見るに灯りはついているようだ。

待ち伏せも、見える範囲にはいない。

軽く仕掛けて安全を確保するか? とも考えたが、ここまでして大規模な待ち伏せなんざあり得ねぇ。

あったとしても、ちんけな罠が精々だろう。

下までは2m程。

梯子なんかがねぇのは気になるが、元から一方通行なのか、あるいは緊急用なのか。

しかし、そこに時間をかけるだけの価値はない。

そう判断して飛び降りた。