作品タイトル不明
上がる狼煙が呼ぶものは1
白昼堂々、領主屋敷へ乗り込む―――・・・ともなれば。
それなりの手は使わなきゃらねぇ。
なので、
『今は領軍が居ねぇって聞いたぜぇ⁉ おらっ‼ 金目の物を寄こせぇ‼』
陽動として一芝居打ってもらうことにした。
ケイが引き連れて来た兵隊の装備を脱がし、数人ずつに分けて組を作って、あちこちで盗賊ごっこを演じさせる。
略奪が目的じゃねぇが、奪った金品は報酬としてくれてやると約束した。
代わりに盗賊として捕まった場合は助けない。自己責任だと言っておいた。
もちろん。なにも盗んでいなければ、後から釈放の手続きぐらいはしてやるつもりだ。
同時多発的に盗賊騒ぎが起きれば、流石に領主屋敷も慌ただしくなる。
それ以外の連中には、逃げようとする怪しい奴が居ねぇかを探させてるが、不安が拭い切れなかったんでジェイド達を都の出入口を封鎖して貰った。
徒党を組んでる他の東領へ繋がる道を。
これでこのルーヴェント領での出来事が知られるのを、少しは遅らせられるはずだ。
「なにがあったんだ?」
「詳しい話はわからんが、町に盗賊が出たらしいぞ?」
「それで非番の連中が駆り出されてんのか」
「運がねぇよな? 俺らの今日の担当が門で良かったぜ!」
「ああ、まったくだな!」
正面の門の前で門番2人が笑い合う。
「―――すみません。シャドウズ・ヴェール」
俺の合図を見たヨハンの声を最後に、
「うぇッ⁉」
「むぁッ⁉⁉」
この2人は自身の影に飲まれる。
黒くてデカい蛹のような姿にされた2人は、地面に転がりながらも抵抗しようと体を動かすが、芋虫のようにはいかない。
前へ進むことも戻ることもできないまま、ただのたうつだけに終わる。
「よくできてるじゃねぇか。拘束も剥がされる心配はなさそうだな」
「こんなとこで褒められても喜べないですよ。それより、このままにしてていいんですか?」
「眠ってもらうさ。終わったら魔法を解いても構わねぇぞ」
いいながら黒い蛹の頭の部分に触れて、精神魔法で昏睡させる。
暴れていた蛹は、すぐにその挙動を止める。
「そういえばなんで、あえて正面からなんですか?」
魔法を解いて門番の姿を確認しながら尋ねるヨハン。
「裏門側には見張りがついてる勝手用の門もあっただろ? しかも、ご丁寧にも裏門側は外に警備が、勝手用の門は内に見張りときたもんだ。片側だけ抑えても意味がねぇし、かといって両方抑える利点もねぇ。人数が多いってことは、連絡や交代の数も多くなるのが普通だからな」
それに、
「今から張る結界とも相性がいいんだよ。現実味ってやつだ」
既に仕込みは終わらせてある。
表は領主屋敷の敷地ギリギリから、裏は余裕を持たせて結界を張る。
これはジェイド達が教会を調べる時に使ったソレとは違う特別製。
音や光を遮断するだけじゃなく、むしろ逆に。
特定の音や事象をも見せる幻覚結界だ。
これからこの屋敷は、火事が起きているように見えはじめる。
それにあわせて、燃える音や、押し入った盗賊の怒声、それに伴う悲鳴なども聞こえてくる。
だから、正面で警備が倒れてる方がなにかと都合がいいんだ。
そんな所へ近付こうなんていう物好きは居ねぇはずだからな。