作品タイトル不明
上がる狼煙が呼ぶものは2
門を飛び越えた後は一目散に屋敷へ走る。
仕込みの段階で当然、中の様子も確認した。
それでも以前と変わりがないとヨハンが言うんなら間違いねぇだろう。
やはりというか、地下辺りにでも施設を隠したか・・・そうでもなけりゃ、他の領地に集めてるかのどっちかだろう。
それ自体はどちらでも構わない。
用があるのは領主だけだ。
教祖の居場所―――・・・それだけわかればいい。
「先生! 右奥の階段を登ってください!」
「なんだっ⁉ 侵入者かッ⁉ 見張りの連中は何をしてるッ⁉」
「警備隊! 敵襲だ‼ 真正面から敵襲だッ‼ 集合しろ!」
門から玄関までは隠密に動いた。
外からでも配置がある程度わかったからだ。
それに、外だと囲まれた時に出来ることがなさすぎる。
平坦なだけの開けた空間で大勢を相手にすること以上に無駄な争いはない。
だから忍んだ。
だが、屋敷内の様子はどうやっても調べられなかったため、全てが未知数。
それなら大騒ぎを起こして連絡や連携を混沌とさせた方がいい。
そう思って玄関扉をぶち破って屋敷の中へ躍り出た。
ヨハンには後ろから進路の指示をもらう。
まずは玄関から右の廊下を進み、奥にある階段を目指す。
「敵の数はッ⁉」
「2人だ‼ 舐めやがって‼」
「どこへ向かってやがる⁉」
「北側階段だ‼ 回り込め‼」
怒号の中でも迅速な伝達。領軍は出払っているはずだが・・・元軍人か。それとも、よっぽど訓練でもしたか。慣れてやがるな。
考えるのも束の間、
「止まれぇ‼」
「なにが目的だッ⁉」
廊下を通行止めのように両手を広げ、立ち塞がる警備が2名。
その後ろには前の2名を補佐するように4名が控えてるのが見える。
「ヨハン。連中に見覚えは?」
「わかりません。屋敷で見たことはないと思います」
「そうか」
そんな確認をしつつ、奥から順次処理していく。
「どこを狙ってる!」
「今になって恐怖で手が震えたか?」
立ち塞がる2名は通り過ぎる石弾を見て調子に乗るが、
「――がっ⁉」
「――ぅごッ⁉」
籠手から打ちだされた弾は寸分違わず狙いに命中し、控えていた内の2人を倒す。
後ろから苦悶の声が聞こえたことで立ち塞がる2名は気を引き締めるが、
「あああああぁぁぁあああッッ⁉⁉」
ボンッ‼ という爆発音と続く絶叫に気を取られ、つい振り返ってしまう。
石弾には炸裂の魔法を仕掛けておいた。
振り返れば床についた焦げ跡と、そこに控えていたはずの4名が転がる。
「な―――」
なにがあった⁉ 恐らくはそんな言葉だろう。
それは音になることさえない。
敵を目の前にして視線を切るなんざ愚の骨頂。
意識外からの攻撃は簡単に人の意識を奪う。
ドサッと残りの2名も倒れ伏し、俺達はそのまま廊下を疾走する。
目的の階段を前に、廊下のさらに奥から。今度は十数人が押し寄せようと集まっているのがわかる。
敵と階段登り口の間には扉があり狭くなっている。そこを抜けるには横2列が限界だろうと見て取れる。
「ヨハン。水だ!」
「はい!」
伝えるや否や、ヨハンは空中に水の玉を魔法で作る。
バケツ1杯分程度の水の玉。
それを暴風の魔法で押し飛ばす。
さながら砲弾のように。
大人が踏ん張ってどうにか留まれる程度の暴風に押し出された水の玉は、形状を保つことも出来ずバラバラと崩れ落ち、それでも玉として飛んでいく。
それは殺傷能力にこそ欠けるが、人の自由を奪い、昏倒させるには十分な威力を誇った。
「うぉぉおおおおお⁉⁉」
扉から出てこようとしていた警備はバチバチと撃ち抜かれ、態勢を崩した瞬間に暴風で吹き飛ばされ、後方の人間を巻き込んで退く。
その隙に俺達は階段を駆け抜け―――。
「敵は上へ行ったぞ‼ これ以上、警備の面子を潰させるな‼ 数が足りないならガキ共も使え‼」