作品タイトル不明
side――ケイト1
「なんで俺様が町の外周で見張りなんて役にされなきゃならねぇんだよ!」
開口一番。不満の声を上げるのはいつもジェイド。
私はそれを羨ましくも思うけど、今回の配役には納得がいっている。
「文句を言うくらいならいいけど、勝手な行動はしないでね」
「しねぇよ! ただこんなことぐらい。アイツらにやらせりゃいいだろ!」
嗜めるエイラに反論しつつ、それでもと別の選択をジェイドが示唆する。
ここでいう”アイツら”とは、南の辺境伯様から借りた手勢。ケイが引き連れて来た兵士達のことだ。
「それは・・・出来なかったんじゃないかな?」
「どういうことだよ? ケイト」
「多分、だけど・・・ゼネスさんはあの人達のことを信用してないと思う」
「やっぱりそうなのかしら? あれだけの人数じゃ、そう簡単に信用なんて出来ないのかもしれないけど、らしくないというか・・・思い切ったことをしているわね」
「そうしてでも動く理由があった。そういうことじゃないかな」
やっぱり―――というからには、エイラも薄々勘づいていたみたい。
ゼネスさんは慎重というより、綿密って印象があるから意外なのはわかる。
「だったら、アイツらに仕事なんてやらせたりしねぇんじゃねぇのかよ?」
「馬鹿ね。私達だけでどうにかできる規模じゃないでしょ? 既に皇都へ2万の軍勢が押し寄せてるんだから。それに、何をしでかすかわからない相手には監視が必要でしょ?」
「・・・なんで俺の方を見て笑いながら言うんだよ」
「心当たりは?」
「ねぇよ!」
なんて事のない日常的な会話。
ここではまだ平和が続いている。
それはいいことだと思う。
でも、違いもある。
「静かだけど、どうかしたの? キューティー?」
そう。いつもなら、あの2人の間にはキューティーが『ずるいですわ!』と割って入る。
けど今は・・・。
「いえ、なんというのでしょうか? 空気? が変なのですわ」
「空気・・・? 息苦しいとか、ニオイとか?」
「そうではありませんけど・・・ニオイ? そういえば微かに甘い香りはいたしますが・・・そうではなくて! 雰囲気! そう、雰囲気ですわ!」
「空気が重いとか?」
「その通りですわよ! ケイト! ここは領都なのでしょう? なのに、声の一つも聞こえないのは、おかしくありませんか?」
「そんなこと考えてたんだ」
「その言い方では普段、私が何も考えてないように聞こえますわよ?」
そう言われれば確かに。この都からは活気なんてものは感じられない。
わかってしまえば気になるものだけど、中へは入るなと。ゼネスさんから言われている。
『私はいつだって、真剣に物事を考えて、核心に迫っていますのよ? それは貴方だって知っているはずでしょう? ケイト。それで、あのー・・・? 聞いていますわよね? 無視していませんわよね? 私、泣きますわよ? 泣いちゃうんですからね? いいんですの⁉』
どうしよう? 調べるための方法は? 他に違和感や相違点はないかな? なんていう考えをキューティーの声にかき乱される。
くすん・・・。と泣きが入るキューティーの姿も。いつもと違うというば違うのだけど、もう1人。
いつもと違う人物がいる。
「リミアちゃんも似たようなこと、考えてた?」
いきなり声を掛けたからか、ハッとしたような表情を一瞬だけ浮かべて、
「そう・・・ですね。はい。そうだと思います」
どちらともつかない答えを返してくる。
「もしかして他のことだった?」
「いえ、私の実家の方も。こんなに静かなのかなって・・・」
この咄嗟に出た言葉は本当な気がした。
私もつい、似たようなことをする。
だから、この言葉は本心。
考えてたのは実家のことだ。でも、それは仕方のないこと。
都に活気がないだなんて、領地経営の観点から見れば大問題だ。不安に思うのは当然・・・なのに、なんだろう? そうじゃない気がする。
これはリミアちゃんがっていうより――・・・。
「おい、アイツらって―――」
考えがまとまらない中で、ジェイドの声が耳に入る。
目線をあげたその先には、どこかで見覚えのある顔が。