軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

因果なる薬効

ジリジリと・・・ただその時を待つ。

滴る汗が落ちるまで、ひたすらに静止しているような感覚。

僅か数秒が何十倍にも感じられる時間。

いよいよ雲がさしかかる。

陽光を遮り、影がその勢力を伸ばす。

斜めに切り込む影は警備の頭上にも降り注ぎ、瞬きの注目を集める。

空を見上げ、同僚と見合い、会話が弾む。

『これで少しの間は涼しくなるな』

どうせそんなことを言っているのだろう。

おしゃべりに夢中になっている最中、上空には氷で作られた透明な板が。

表裏を決めるため影で黒く塗り固められた一面を天へと向ける。

施設内部から見えないよう、真上ではなく斜めから。高度と角度は慎重に。

箱の中身は―――・・・。

「先生。これってどういうことなんですか? なんで・・・」

「一端、離れるぞ。影はもう消していい」

「あ・・・、はい!」

あり得ない位置に鎮座していた氷の板と、それを塗り固めた影は消失する。

音もなく、跡形さえ残さずに。

そこでは何事もなかった日常だけが続く。

元公園と溜め池のちょうど中間。ここを通るのは手ぶらの子供達だけだ。誰かに見つかる危険はない。

そこでヨハンが唸りをあげる。

「それで先生。あれってなんなんですか? というか、どういうことなんですか? なんで施設の中で栽培なんか・・・・・・」

その言葉通り、とある草花が施設内で栽培されていた。

「アレはマーモウっつー植物だ」

「マーモウ・・・ですか?」

「多分な。実物を見た事があるわけじゃねぇから断言はできねぇが恐らく」

「それで、なんでそんな植物なんか・・・」

「マーモウには幻覚作用や中毒性があるんだそうだ」

「幻覚と中毒・・・って! まさか‼‼」

「薬―――だろうな。そういえば皇都でも、そんな話になってやがったな。確か”心水”だったか? その中身がマーモウから生成された薬で、そのための栽培施設がこんなところにあるとは思いもしなかったが・・・・・・」

薬の出どころを探ってなかったのはこっちの落ち度だが、ここで出てくるとはな。

こうなってくると、領主を生かすのは不可能に近い。

「禁止された薬物っていうことですよね?」

「厳密に言うなら制限された薬、だな。マーモウの原産地は南西大陸らしい。亜人種の間では少量を薬として使うそうだ。昔そんな話を聞いた。皇国では作成が禁じられてて、ガルドナット経由での購入品しか使用を許可されてなかったはずだ」

「聞けば聞くほど、じゃないですか。そんな代物だから施設なんかで――」

「まぁ見つからねぇようにってのもあるんだろうが、環境を用意するための施設でもあるんだろう。土壌を疑似的に再現したりな」

領主を問い詰めるには十分すぎる証拠。

元溜め池にあった施設から運びだされている箱の保管先へ行けば、現品も押えられるだろう。

本来なら、それを皇都へ送って陛下からの勅令を待つんだろうが、

「領主屋敷に踏み込むぞ。いいな?」

どこまでいってもこれは私怨。

教祖を逃がさないためにも、大々的な動きを選ぶつもりはない。