作品タイトル不明
隠蔽の切れ端
ルーヴェント領の地図を広げて的を絞る。
「この中央にある広い敷地は領主屋敷でいいんだな?」
「はい。間違いないです」
「庭にそういう施設を建てるような真似、すると思うか?」
「・・・分かりません。あり得ないとは言い切れない気がします」
「普通じゃねぇのは分かり切ってたことだが・・・そこまでか?」
「外聞を気にするなら、そのための貢献には手を尽くすかなと・・・」
「救えねぇな。どこまで行っても―――」
子供を捨てた親がそれを正当化しようってんだ。しかも、それがまかり通ろうとしてる。こんな話のどこに救いがあるってんだか。
それを主導してるのが宗教っつーんだから笑えねぇ。
「なら一端、保留にしておく。教会の位置はわかるか?」
「屋敷から北西辺りにあったはずなので、変化がなければここが教会だったと思います」
ヨハンが指さす箇所には、他の民家よりも広い敷地を持つであろう建物が記されている。これが教会だというのなら説得力はある。
だが、
「町の中央に近い位置にあるせいで、その手の施設を増設する余裕はなさそうに見えるが・・・」
町外れに作られるのと違って集まり易くはあるが、密集地に建てられてるから融通は利きそうにもない。
ましてや周囲には公園はおろか未使用の土地もない。まさか墓地を更地にするわけもないだろうし・・・教会近くの線はなしか?
「教会に地下があるとか、聞いた記憶は?」
「ないですね。そういう話があったなら、七不思議みたいになってないと。子供の頃にはやるじゃないですか」
「そうだな。よっぽど上手く隠してなけりゃぁ噂ぐらいにはなるか・・・、それか新しく作られたか」
「あ、そうですね。今は子供がいないから・・・」
「その親もな。噂は子供やその親から出回るのが一般的だ。大体は分別つかねぇ子供の口の軽さと、それを聞いた親の好奇心のせいだが、面倒だな」
噂をされる方になっても面倒だが、封殺されても面倒なことになるとは。
「他があるとすれば、この辺りだが・・・ここには何があるんだ?」
「こっちは公園ですね。と言っても遊具が在ったりするわけじゃないですが。ただの広い土地だったとも言えますね。長椅子くらいは設置してあったかな。それでこっちが確か溜め池だったはずです。でもなんで表記が違うのかな? 昔はちゃんとしてた気がするんですけど・・・」
「池を埋めた? にしたって、そこに施設を建てるか? 立地もだが、地盤が終わってるだろ」
「僕が出てすぐから着手していれば8年近くになりますから、出来なくはないと思います」
「だとしても、新しい溜め池がねぇのはおかしい。必要がねぇなら最初からそんなもんは存在してねぇはずだからな」
「それはそうですね・・・じゃあ、この地図がおかしい?」
「これはこの都へ先に入って調査をしてた連中が、ここで買ってきた地図だ。偽物・・・あるいは未改訂版を掴まされたんなら、明らかにおかしい挙動をしてたってことになる」
「あり得ない―――ですかね?」
「いや・・・十二分にあり得ると思ってな」
そもそも直接の潜入を選んだ理由がそうなんだ。
手に持った地図の信頼性がどの程度か、なんて。考えなきゃならねぇ日が来るとは思わなかった。
敵対国家のそれより疑わしいって、信じられるか?