軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

穏便であるが

「―――ってな感じで、確かに机の裏に印があった。それ以外については、正直いってわからねぇ」

次の町へ向かう道中、合流したジェイドから顛末を聞く。

「そうか。だがこれで、領地の端まで望福教が浸透してることが確定した」

「そうか・・・って! もっと何かねぇのかよ! 礼ぐらいはいってもいいんじゃねぇか⁉」

「あぁ、そうだな。助かった」

「全ッ然、気持ちが籠ってねぇじゃねぇか‼ いいか? こっちは苦労したんだよ‼ 印を見つけた直ぐ後に、牧師が帰って来たせいで咄嗟に言い訳を考えたり、それが表情に出ないように必死で取り繕って来たんだぞ⁉ それを――‼」

「牧師が? 夜中に何の用で帰って来たんだ?」

「それは・・・アレだ。別になんでもねぇよ・・・」

急に失速して隠そうとするジェイドに変わってエイラが言う。

「窓から漏れる光を見られたみたいで・・・」

「なるほどな。その辺りの対策を忘れたのか」

「俺様だって牧師が来た時点で気付いてたからな‼」

「見つかってからじゃ遅ぇだろ。お前のミスを俺のせいにするな。ま、いい経験だったんじゃねぇか? 人を騙す。褒められたことじゃねぇが、必要な時もある。度胸はついただろ」

「面と向かって嘘を吐き通すだけならまだしも、その嘘も即興で考えるとか二度とやりたくねぇよ・・・」

「そうね。危うく私達は貴族だ~とか、言いそうになってたものね。辻褄が合わないどころか、根底から引っ繰り返るようなことを言うのは辞めなさいよね。私がギリギリで遮れたからいいものの。今後が心配だわ」

「アレはモノの弾みっていうか・・・そうだ‼ 弁償‼ アンタが潜入なんてやらせるから、くだらねぇ借金が出来ちまったじゃねぇか‼」

エイラの方へ向いていたかと思えば、思い出しかのようにこっちへ向いてジェイドが抗議する。

「何をしたんだ?」

「牧師の部屋には鍵が掛かってて、多少強引だけど鍵を破壊して開けたのよ。で、部屋を漁ってるときに見つかったから、壊してしまったことを誤ったのだけれど・・・それをどうするか? っていう話の流れで弁償することになったの」

「そこでコイツが貴族だとか言いそうになったから、慌てて話をまとめに行った結果か」

「ええまぁ、概ねそんなところね」

ぐッ⁉ と気圧されるジェイドをよそ目に。どういう状況だったのか、をエイラから引き出す。

「牧師の接近に気付いたのはキューティーね。キューティーはこう、不器用だから細かい調べものとかには向いてないのよ。だから見張りを頼んだわ。その責務を全うした形ね。それを聞いて、私はまず結界の解除をしたわね。もちろん。外から結界が見えるようなヘマはしてないわよ?」

「それが出来るなら、光を遮る効果も付けるべきだったな。窓には注意してたんだろ?」

「・・・確かにそうね。音のことばかりに気を取られて、そこは蔑ろにしちゃってたわね」

「まぁ扉を破ることが決まってたんだ。次から気を向けられればいい」

「覚えておくわ。それで、私達は部屋の中と外に別かれて待機。そのまま牧師が来るのを待ったわ」

「わざわざ中に残ったんだな」

「その方が真実味が増すでしょ? あらかじめ床につけておいた凹みを気にする感じでね。そのおかげか、それほど怪しまれてはなかっと思うのだけど、それでも緊張はしたわね。なんというか、信じてるものが違うってわかってるせいかしら、得体のしれない存在のように思えて・・・」

「そりゃそうだろうな。何が琴線に触れるかわからねぇわけだからな。下手なことを言えねぇと思えば、緊張ぐらいするだろうさ」

「全くその通りだわ。優しそうな微笑ですら、底知れない策謀に感じられたもの。実際には田舎村の牧師にそんな大それた計画なんて、あるはずがないのにね」

「苦しい時にこそ笑う意味が分かっただろ? 限界が見えねぇことがどんなに怖いか」

「嫌と言うほど。ジェイドったらその感覚に飲まれたのか”後始末をどうしましょう?”っていわれた瞬間に貴族だって誇示しようとしちゃって・・・弁償だって即金で、なんて言われてないのに」

「冒険者はあんまり金を持ち歩かねぇからな。相手だってその程度のことはわかってる。その上での相談なら、期日を決めての支払いだと分かりそうなもんだが・・・」

「えぇ本当に。器が小さいというか――・・・」

「おい! 誰の器が小さいんだよ⁉」

「あら? だったら肝っ玉とかの方がよかった?」

「どっちも違う‼ いいか? 俺様だってな―――‼」

ちょっとした笑い話。

キューティーやケイトも話にゃ入って来なかったが、今も笑っている。

ただ、ヨハンとリミアにはそんな素振りもなかった。