作品タイトル不明
隠匿の解明
偽装工作を行ってまで入った牧師の部屋。
当然、明かりはついていないので手持ちで中へ。
一見する分には何の変哲もない部屋だ。
左右には大きな棚が配置されており、上には書物。下には扉がついていて、中までは確認できないが小物でもしまっているのか。
窓を背に入り口と相対する机の他に、向き合う長椅子が設置されている。
詮索した証拠をなるべく残さないように、まずは物の配置を記憶しながら見渡していく。
決して安くはないであろう本が所狭しと並んでいる棚は、放っておいてもケイトが調べるだろう。そう思ったジェイドとエイラは、1つしかない机に2人で向かう。
引き出しは数か所。
真ん中にある平たく浅い引き出しにはインクやペン。そして、それを使うための紙が幾分か仕舞われているが、これは見ても仕方がない。
右側の引き出しを上から順に開けていくが、めぼしいものはない。
上から、村人が出したであろうの意見書。他の教会からの連絡案内。教会に必要な不足物や補充内容。それらの解決、未解決を纏めた書類が収められていた。
他が紛れてないのは牧師が几帳面であるためか・・・。
残った一番下には集会で使いそうな杯と小さな像。それ以外にも小物が少々。小さな像は礼拝堂にあったそれを持ち運べるように縮小化したものか。
単品で怪しいものはない。
一通り引き出しを調べ終わったのを確認して、ケイトの進捗を訊く。
「なんか見つかったか?」
「駄目。それらしいものはなかった。新しい聖書なんかも見つからない」
そう言われて左右の棚を見る。
壁を埋め尽くすほどの棚と、その上半分に詰め込まれた書物。
これだけの量だ。全てを調べ尽くすのは無理。
その中からお目当てのものを引き当てるのはどれぐらい難しいのか? ジェイドにはわからないが、ケイトも闇雲に探したわけじゃないはずだ。
例えば、聖書と同じような厚さの本を重点的に調べたり、埃を被っている本は除外したり。それでも見つからないのなら仕方がない。これ以上を望めば、下の扉をも開けて回るしかない。
「ゼネスさんが言っていたような印は見つから無いわね・・・どうする? まだ夜は長いけれど、探すの?」
そうエイラが言葉にすることで思い出す。
『調べてこいって言われたって・・・・・・何をどう調べるんだよ?』
『村の人間へ望福教について聞くだけでもいい。どのぐらいの影響力があるのかを知っておきたいだけだ』
『そうは言ってもよ・・・こう、なんかねぇのかよ? 目印みたいな――』
『――あぁ、それらしい印ならあった』
『どんなのだよ?』
『言葉で説明しろってのか? けど、ま・・・そうだな。今にして思えば、竜の眼を模してたような気がしないでもねぇ』
『・・・竜の眼?』
『その瞳孔、だな』
『分かるかよ! そんなもん‼』
そんな会話を。
その後に印がどこにあったのかを聞いていたことを。
恐る恐る、引き出しの裏を覗き込むジェイド。
しかし。
そこには何の印もなく。
なんだよ。ビビらせやがって・・・・・・などと心の中で悪態を付く途中。
「待って。そのまま仰向けになって」
「なんでそんなこと―――」
「いいから!」
エイラに言われるがままに椅子を退け、引き出しの裏を見上げて寝そべる。
あまりにも間抜けな状態に不満を抱きつつも。
ゆっくりと抜き取られる引き出しを見て、震えた。
『――机の裏だ』
確かにゼネスはそう言った。
引き出しの裏ではなく、机の裏と。
僅かにあった違和感。あると言われた数に足りない間違え探しのような。見ればわかりそうなのに、なぜか気付かなかったソレに。
今、気付いた。
普通。
ペンも、ペン立ても。
机の上にあるものじゃないか?
予備ならともかく、机の上になにもないなんて。
几帳面だとしても逆に、効率が悪いだろう?
だが、もし―――。
机の上に別のなにかを。
大きく場所を取るなにかを置く必要があったなら?
ジェイドはそこで、まだ見ぬ誰かと目が合った。