作品タイトル不明
隠蔽と偽装
「本当にこれでいいのか? 思いっきり行くぞ?」
「心配性ね。大丈夫よ・・・たぶん」
教会の中で、唯一鍵の掛かった扉の前で最終確認をするジェイドと自身なさ気ながらも、自分の結界を保証するエイラ。
夕食を挟んでまで教会内を調べ回ったが、田舎村の教会を調べるのにそう大した時間は費やさなかった。
礼拝堂におかしなところはなく、各部屋もただの客室程度。部屋の数だって数えるほどだ。
予想外だったのは厨房に当たる場所がなかったことぐらい。
おかげで貧相な食事からスープが1品消えてしまった。
乾いたパンを冷えた水で押し込む行為を食事と呼ぶには厳しかったが、これを経験したからこそ、牧師が裏にポツンと建つ家に住む理由にも納得がいった。
それからすぐに、この部屋を調べようという話に戻ったのだが・・・。
扉を破るか、窓を破るかで話し合う必要があった。
決着まではそう長くはなかったのだけれど。
決め手は1つ。
灯りを外に持ち出すと目立つ。これに尽きた。
外には街灯など在りはない。
普段牧師1人しかいない教会の周りに灯りがあれば、村人から見れば異常に映る。
残る問題としては音と言い訳。
扉にしろ、窓にしろ、破ればそれなりに大きな音が響く。
夜の田舎村だ騒ぎになっても困る。
これを解決する手段として選ばれたのが結界術。
エイラがサルベージにて、フェリシアから教わっていた魔法の一部である。
結界とは読んで字の如く、界を結ぶ術であり。それはつまり、世界を2つに隔てる魔法でもある。
その効果の中には、音や光を遮断するものが含まれている。
これに必要なのは魔力量よりも才能であり、その内の1つが加護Lvであるため、教会が盛んに研究している魔法でもあった。
なんでも、神に空間を切り取って与えてもらう魔法なんだとか。
それをここで、教会の一部を破壊するために使用するなど、罰当たりもいいところだろう。下手をすれば効果が発動しないかもしれない。
本当にそんな理屈で動いているなら・・・だが。
しかし結果から言えば、そんな心配など不要だった。
重鉄鋼の鎧を巧みに使ったジェイドの体当たりによって鍵は壊れ扉が開く。
バガンッ‼‼ という大きな音を響かせるが―――。
結界の外に待機していたキューティーが、頭の上に両手で丸を作ることで、音が外に漏れていないことも確認できた。
「ね? 大丈夫だったでしょ?」
「後はこの辺の床を踏み抜いときゃいいか?」
「もうちょっとこっちの方が、自然に見えると思う」
少しばかりハラハラしていたエイラが胸を張って聞いてみるが、ジェイドは次の工作に取り掛かっており、ケイトもそれを手伝うことに尽力する。
「無視しない‼」
「痛ッ‼ だったら最初っから自信ぐらい持っとけよ‼」
「2人共。遊んでないで、もうちょっとそれっぽくしないと!」
「分かってるわよ! もう‼」
ケイトは床に細々と魔法を掛け、ジェイドが踏み抜いた付近の床材を腐った感じにする。
これは言い訳のためだ。
扉の鍵を壊せば、どうしたってバレる。
だから、故意ではないと言い張るための工作として、”床が腐っていて踏み抜いてしまい、扉に倒れ込んでしまったがために鍵が壊れた”ように偽装することにした。
扉を蹴破らずに体当たりで開けたのもそれが理由である。
低めに屈んで当たり所を下げたりもしている。
エイラは転んだ時に出来た床の凹み担当だ。
キューティーは不器用なのでこういった細工からは離れ、裏口の監視と音漏れの確認を任された。
ジェイドは開いた扉の先でわざと転んで、より現実的な傷を床に残す。
そう、あくまでも事故だと。
自分にさえ言い聞かせるように。