作品タイトル不明
平穏に潜む不穏
灯りのある屋内とはこれほどに安心感があるのかという実感。
そんな当たり前を噛みしめながら、教会の中を探る。
一応、関係者が居ないかの確認を終えてから。
「特に変わったところはない・・・かしら? 変な印とかもないわよね?」
「それらしいのはねぇ。この像も別に普通だし・・・っていうか、これって誰なんだ?」
「そりゃあ―――・・・神様、でしょ?」
「だから! その神様ってのは誰のことなんだよ‼ って言ってんだろ⁉ 皇都の教会にもあんま行った記憶ねぇし、おんなじ像なのかも知らねぇけど、教会が崇めてんのは加護なんだろ? じゃあ、この像は誰なんだ?」
「だからそれは・・・加護をくれる神様でしょ」
「だったらコイツは――」
「―――ゼネスさん。と、いうことになりますわね?」
像の前で問答していたジェイドとエイラにキューティーが割って入る。
「うおっ⁉ って! そっちはどうだったんだ?」
「残念ながら予想通りでしたわ。牧師様のお部屋には鍵が掛かっておりましたわ。他には私達が利用できるような、客間とでも言うべきお部屋ばかり。それ以外だと外へ続く裏口があったぐらいでしょうか?」
「そう。仕方ないわね。それで、ケイトはどうしたの?」
「向こうで本を読んでますわ!」
「・・・・・・ちょっと、呼んできて」
「わかりましたわ~!」
手分けしたのはサボるためではないと怒るためにケイトを呼び出すエイラ。
しかし、
「これ。向こうの部屋にあった本。いわゆる聖書」
ケイトが読んでいたのは自前のもではなく、部屋で見つけたものだという。
「聖書って、教義とかが書いてあるアレよね?」
「中は加護について書かれてるから、現教会のものだと思う」
「客間に・・ってことは布教用? 教会に泊まるのは私達みたいな旅人然としている人が多いだろうし、その全員が信徒ってわけじゃないものね」
「確かに俺達も熱心な方じゃねぇけどよ。完全に信じてねぇかって言われるとそうでもねぇだろ? 子供の頃から、なにかと関わるんだし・・・布教のためとはいえ、そんなもんを部屋に常備しとくか?」
その疑問と同調するように、本を見つけたケイトも頷く。
「あったのはこの1冊だけ。それに誰かが使ってた形跡もある」
「でしたら、それは牧師様のものではありませんの?」
「普通に考えりゃそうなるよな。けど――」
「牧師なんて人が大事な経典を手放すかしら?」
「失くしていただけ・・・ということも、あるかも知れませんわね?」
「探したらすぐに出てくる失せものなんて、失くしたとは言わない」
「そうね。逆に明確な意図で手放したんだとすると・・・新しく別のを手に入れたってところになるわね」
「問題はその中身だな。どうする? 鍵をぶち破るか、窓をぶち破るか」
直ちに力技を提案するジェイドに頭を抱えるエイラ。
けれど、他に方法があるとしても、実行に移せるのは明日以降。
それほど時間をかけていいものか。
なにより、出来るとしても陽動くらい。
結局は力技に頼る可能性が高い。
だったら今でも―――そう考えてしまうのは、短絡的な思考に汚染されているからだろうか?
色々な意味で似つかわしくない像の前で話し込む姿は、まるでそこに居ないはずのもう1人を彷彿とさせた。
ただし、そんな話をしてたということは全員の頭から既に跡形もなく。
見られているという漠然とした意識だけが、責任感を刺激した。