作品タイトル不明
平凡なほど平穏
平凡な教会。
皇都のそれと比較しても、特筆すべき点はない。
大きくはなく、豪華でもなく、人で溢れることもなく。
村の規模に比例した慎ましやかな木造の教会。
白を基調に塗られた壁も所々剥げており、年季を感じさせる。
「こんにちは~・・・・・・」
どんな人であっても通れるように大きく作られた扉を押し開け様子を窺う。
牧師がどこにいるかは聞けなかった。
中に入って待っていれば返ってくるわよ。というのは、おばさんの言。
薄暗くなりつつある空から一層の拍車を掛けられたかのように、照明が付いてない教会というのは不気味なほどに暗く感じる。
「・・・・・・この中で待つのかよ?」
「・・・そうは言っても外だってもう日が落ちるのよ? それでも外の方がいい?」
「そうは言わねぇけど・・・・・・言わねぇけどさ、」
「確かに暗いですわね。勝手に明かりをつけてしまってもよろしいのでしょうか?」
「私は中の方が落ち着く・・・」
「こんな暗い所で本を読んでは視力が落ちてしまいますわ⁉」
こんな場所であっても、自分らしく居られる2人とそれを羨む2人。
スススッと中へ入って並ぶ椅子の最後尾、その端を陣取り本を出すケイトと注意するキューティーの明るさにつられ、ジェイドとエイラも中へ入る。
もう! とケイトを嗜めながら、壁の燭台へ視線を飛ばしそわつくキューティーをしり目に。
ポゥ。と教会の奥から玉のような光が現れる。
「「―――ッ⁉」」
ビクリと肩を跳ねさせたのも束の間。
「おやおや、こんな時間に―――・・・ということは来客だね? 気付いてあげられなくて申し訳ない。どうか、しましたか?」
少ししわがれた男性の声が響く。
「・・・あ、あの私達、今晩泊まる所がなくて――・・・」
「ああ、そんな事ですか。ええ、この教会をお使いいただいて結構ですよ。なんにもありませんが、部屋と寝床くらいなら空いていますから」
エイラの不意に出した裏返った声には触れられず、優しい言葉が返る。
「あ、ありがとう、ございます・・・」
「いえいえ。しかし、私はもう戸締りをして家に帰る所なのですが、夕食は大丈夫ですか?」
「それは、はい。一応・・・」
「そうですか。それは良かった。ですが、足りなければ家を訪ねてくださいね。裏手にポツンと建っていますから、間違わないと思いますよ」
「えっと、じゃあ・・・その時は、」
「ええ、では―――」
そう言って、しわがれた男は一礼をしたのか玉のような光が揺れる。
「――お待ちくださいまし‼」
そのまま退出しようとした気配を察知して、キューティーが呼び止める。
「なにか?」
ピタッと光が止まる。
まさか今ここでなにかを聞き出そうとしているのかッ⁉
そんな雰囲気が一瞬ジェイドとエイラに漂うが、
「灯りは勝手につけてしまってもよろしいのでしょうか⁉」
まったくどうでもいい質問にコケそうになった。
「ははは! そのくらい構いませんよ。どうぞ、ご自由に」
「ありがとうございますわ!」
それだけ言って、光はどこかへ消えてしまった。
いや、恐らくは裏口から外へと出たのだろう。
蚊の鳴くような小さな扉の開閉音が聞こえた気がした。
「・・・・・・はぁ、驚いたわね」
「・・・声まで裏返すほどかよ」
「あら? だったらどうして受け答えを私にだけやらせたのかしら?」
「それは――・・・ちょっと考え事をしてたというか・・・」
「何を考えてたのか、聞いてもいい?」
慣れ親しんだジェイドとエイラ2人のやり取りに、キューティーはうふふと笑いながら、
「それでは灯りをつけさせていただきますわね?」
壁の燭台に火を灯そうと確認する。
「ッ! いや、俺がやる‼ キューティーに火付けを任せると教会が燃えるかもしれねぇと考えてたんだ‼ 俺様は‼」
閃いた! とばかりに飛びつくジェイド。
「いくらジェイド様と言えど、失礼ですわ‼ 私だって魔法の練習をしていますのよ⁉ このくらい――」
「あっ⁉ キューティー‼ やめなさいッ⁉」
やればできると照明しようとするキューティーに、今度はエイラが実際に飛びつく。
調べようとしている教会を燃やされてはかなわないからだ。
キューティーの魔法の制御は未だに大味である。