作品タイトル不明
平凡の体現
――ルーヴェント領内部。果ての村。
「なんていうか・・・仕方ないのはわかってるんだけど、こき使われてるわね。私達」
「あの2人だとバレるかも知れないから。それに私達なら、”冒険者として”で誤魔化せる」
「この程度、あのおっさん達でも良かっただろ」
「そこは信用の差ってことで納得しなさいよ。第一、あの人たちは冒険者じゃないでしょ。しかも、あの数から代表を決めるってなると結構な時間がかかると思うけど・・・待ちたい?」
「・・・勘弁だな」
「ジェイド様さえいらっしゃるなら、私はどこへでもお供いたしますわ‼」
「そうは言っても・・・」
関所を超えた先。一番近くにあった村へジェイド、キューティー、ケイト、エイラの4人で訪れていた。
目的はもちろん情報収集のため。
200人足らずの新兵や、腐ってもこの領地出身のヨハンを送り込むことは出来なかった。
だったら本人が直接行けばいいじゃないかとも思ったジェイドだったが、『顔を知られているのは俺も同じだ』とゼネスから言われては返す言葉もなかった。
流石に手配まではされてないだろうと思いつつも、この領地に近付いていることを察知されたくないという気持ちも理解できるため、渋々引き受けたというのが現状だ。
しかし、
「こうも何もねぇんじゃな・・・」
ジェイドに見える景色は本当にただの田舎の村という風景。
これと言った違和感もない。
宿さえなさそうな飛び切り簡素な村。
それが感想だった。
「誰かに声を掛けるくらいしなさいよ」
「なんつって声掛けんだよ。冒険者なんだけど、から先が出ねぇよ。こんななにもねぇ村! 迷子とでも言うつもりか? 俺様は絶対に嫌だぞ‼」
「私達にまで見栄張んなくたっていいわよ。とはいえ、それはそうなのよね。ケイトは何か思いついたりしないかしら?」
「ごめん。流石にこんな村だと・・・特産品や名物もなさそうだし、口実に使えそうなものは何も―――」
「そうよね。かといって迷ったっていうのは・・・」
「い・や・だ‼」
断固として拒否するジェイドの姿に眉の下がるエイラ。
恥ずかしいという意見が分かってしまうがために強行は出来ない。
だがしかし、もうすぐ日も暮れる頃合い。
このまま何もしなければ、なんの用もなく村に立ち寄っただけの不審者になってしまう。
報告自体は『特におかしな様子はなかった』でも意味はあるが、不審者として認識されると警戒を誘うかも知れない。
強襲を目標とするなら、それは避けるべきで~~~・・・・。
グルグルと思考がイタチごっこに陥りそうになっていたところで、
「あなた達、こんな道の端っこでどうしたの?」
予想外にも相手から声を掛けられてしまった。
声の主は典型的なおばさんだ。
世話好きなのかもしれない。
「私達は冒険者で~」
「あらまあ! 冒険者がこんな何にもない村に一体何しに来たの?」
今一番言われたくないセリフを! とエイラがぎくりと軋んでいると、
「もちろん依頼を求めてやってきたのですわ‼」
キューティーが自信満々に答える。
「依頼だって? こんな状況の時に? 私らにはよくわからないけど、領主様方はなんだか皇王様ともめてるんだろう?」
「だからこそですわ‼ そのせいで領軍は今、出払っているのでしょう? でしたらモンスターの被害や、力仕事の依頼があってもおかしくはありませんわよね? それどころか、無い方がおかしいのではありませんこと?」
ツラツラと言い訳が出てくるキューティーに感心しながら、一同は頷きを持って同意を主張する。
「まあまあ! なんて殊勝な心掛けなんだろうね! こんな危ないかもしれない所へ、人助けのためだなんて!」
それを聞いたおばさんは口を覆って驚いて、さらには褒めそやしてくれる。
「私達にとっては当然の行為ですわ‼‼」
おーほっほっほという高笑いが、これほど似合う場面もないだろう。
説得力の権化となったキューティーの言葉に感激したおばさんは、
「あなた達が今日、泊まる場所は決まっているのかしら?」
重大な助言をももたらす。
「あら! そういえば忘れておりましたわ‼ なにしろ私達、人助けのため馳せ参じたのですから‼」
くどいぐらいの念押し。
そこまですると怪しまれるんじゃ・・・なんて邪推もなんのその。
「だったら教会へ行くといいわよ。あそこの牧師様はお優しいから、あなた達を助けてくれるはずよ。あたしの家だと4人は狭いからね。ごめんね」
「そんなことありませんわ! 教会をご紹介頂いたこと忘れませんわ!」
「あらあら、本当にいい子達ね」
などと歓談を弾ませつつも、名残惜しく解散となった。
「キューティー・・・よくやった」
「まあ! ジェイド様にお褒めいただけるだなんて! 光栄ですわ‼」
「・・・教会。違和感がなくて全然気が付かなかったけど―――」
「ええ。真っ先に思いつくべきだったわね。これは宗教戦争なんだって」
教会。
どんな町や村にも大抵は存在する施設。
それが故に。あって然るべきという認識にされ、違和感さえ持てなかった。
外見は何も変わらない。
でも、その中身は?
それを調べるために、一同は教会へ身を寄せる。