軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

閉じた領域

――ガルバリオ皇国の東側領地付近。

「―――で、この道をまっすぐ進むと関所があります。そこを超えるとルーヴェント領に入るので気を付けてください」

道なりに指差してそう答えるのは、他でもないルーヴェントの家名を持つヨハンだ。

「その関所から領都まではどのくらいかかるんだい?」

「普通に歩けば2日ですね。間に丁度2つの町村があるので、そこで休む感じです」

「徒歩でかい? 随分と近いんだね」

「あまり広い領地じゃないですからね」

「人通りも少ないし、嘘じゃないんだろうけど・・・本当にそんな所に教祖が居るのかい?」

「それを確かめに行くんだろ。居なけりゃ居ないで構わねぇよ。情報ぐらいは手に入る」

思ったことをそのまま口にするのは鼠の王ことケイだ。

俺はそれに適当な返答をしつつ、ヨハンへ尋ねる。

「それよりヨハン。なにか気になることはねぇか? 昔と比べておかしな点でもいい。わざわざ覚えちゃいねぇかもしれねぇが・・・」

「確かに最後に通ったのは学園へ行く時ですから、あんまり覚えてないですけど、それにしても。完全に通行がないのは気になりますね」

今、目の前にしている道はそれなりに広く、見通しもいい街道だ。

唐突なモンスターからの襲撃も、賊共の待ち伏せも気にしなくていい比較的安全な街道。

そんな道を俺達は通ってきた。

にもかかわらず、ここまでに出合った人影はなんと0。

これは普通ならあり得ないと言っていい現象だった。

幾ら俺達が大所帯で、ガラの悪そうな図体のデカい連中を引き連れているからと言って、すれ違う事もないってのは異常だ。

誰も町や村から、この領地から外へ出てねぇってことになる。

「セイルスルーからこっちへ来る商人はいねぇのか?」

「そんな手間を掛けて何になるってんだい? 皇都に持って行った方が高く売れて、売れ行きもいいとくるんだ。東側へ足を延ばそうなんて酔狂な商人が居ると思うかい?」

当然だとでも言いたげにケイが答える。

首都が中央に近い国にありがちな話だな。

経済が首都に集中するため、皆が首都を目指す。

その結果また需要が中央に集中し、人や物、金が一度中央を経由するようになる。

そうなると地方同士が関わることが少なくなり、道やその道中にあった村や町が衰退する。

現に、俺達は南側かルーヴェント領へ向かい、その道中で誰とも出会わなかったわけだ。村や町も無かった。

「でも、なんでこの道なんだい? 皇都から直接向かおうとすると、別の領地にぶち当たるってのは理解してるし、あたしらと合流するのにも南からが都合がいいのも分かる。けど、見つかりにくい道なら他にもあるんだろ? こんな人目に付きやすい街道じゃなくてさ」

「すみません。僕が他に道を知らないばっかりに・・・けど、最短で皇都へ向かう道じゃなったのは良かったかもしれませんね。ルーヴェントの子供だと思われるのが恥ずかしいからって、遠回りさせられたんですけど・・・」

「え? あ、いやっ! あんたの都合だったのかい・・・? というか! それは、なんとも―――・・・」

謝るヨハンとしどろもどろになるケイ。

お互いの距離もつかめてねぇし、気まずくはなるか。

「後付けにはなるが、人目にはつかなかった。それ自体が違和感だってことも分かったんだ。悪い選択じゃなかっただろ」

「ま、まあそうだね! 無駄がなくてよかったじゃないか!」

「そうですね。先生の役に立てて良かったです!」

「それに領地から人が出てねぇってことは、自給率が異様に高いわけでもなけりゃ東の領地同士で手を取り合ってる証拠でもある。だとすりゃぁ――」

「必然的に他の領地の情報も手に入るってわけだね! 最悪、教祖が居なくともその情報が手に入ると!」

「あくまでも可能性だがな」

「それだけわかれば十分さ。そうと決まりゃ早速、準備に取り掛かろうじゃないか! ほら! あんた達‼ ボヤっとしてないでテキパキ働きな‼」

急に張り切って、引き連れて来た新米兵団へ檄を飛ばすケイ。

「いきなりどうしたんですかね?」

「さぁな。お前の話を聞いてやる気でも出たんだろ」

「優しい人? なんですね」

ただヨハンには、その気まずさは伝わってはいなかった。