作品タイトル不明
side――リミア1
「教会について・・・とは、難しいことを聞くね」
「答えられないのでしょうか?」
「簡潔には出来ないだろうね。なにせ、もう数百年と続いてきた信仰だ。理念は変わらずとも、扱いや在り方、対応なども。時代やその時の教皇によって大きく傾いてきた」
「扱い・・・?」
「加護の強いもの、弱いものの待遇とでも言うべきものだよ。苛烈な時代であれば、神を自称した教皇も居たとか・・・といっても、そういう文献が残っているというだけなんだがね」
「15年から20年ほど前はどうだったのでしょう?」
「15年から20年前となると、私からグレアム君へ引き継いだ頃になるね。交代の前後は少し厳格になるきらいがあって、当時もその傾向に従っていたはずだ。ちょうど、彼の加護Lvが上昇したこともあってね」
「ということは、加護Lvの低い人は・・・」
「今よりも少し、生き辛い時期だったかもしれない。とはいえ、これからとは比べるまでもないだろうが―――」
先生が去った後、枢機卿と名乗るお爺さんから話を聞く権利を得ました。
これは私が特別だからではなく、
『彼は私を疑いもしなかった。それに、死者への敬意も忘れず、あまつさえ敵討ちを誓うのだ。君がその手伝いをしようというのなら、隠し事などできないよ』
先生が勝ち取った信頼と、これまでの実績なのでしょう。
枢機卿は包み隠さず話してくれているのだと思います。
時には思い出すように中空を見つめ、時には俯き拳を握るのですから。
「ではそんな中、加護Lvが下がるようなことがあれば―――?」
「まさか! そのような現象、聞いたこともない‼」
それは大層な驚きよう。
恐らくですが、嘘ではないのでしょう。
なによりも。知っていればもっと、大事として周知されているはずです。
「しかし、もしそんなことが本当にあったらな・・・迫害の理由にはなっただろう。同時期に教皇へ就いたものの加護が上昇しているのだ。比較対象とされることに疑いはない」
・・・母はその被害にあった。だから父は教会を信じていない。
そういうこと、なのでしょうか・・・?
”加護というものを信じるな”これはお父様が常々おっしゃっていた言葉。
小さな頃はなんとなく、ただそういうものなんだろうと思っていましたが、皇都へ来て、学園へ通う内に。
違和感を覚えました。
なぜなら、加護にはあまりにも。悪いところがなさ過ぎたから。
大きな意味や役割を持つわけではないけれど、その効果に悪いことはなく。
ただ漠然と”運”が関与するだけ。
そんなものを信じ縋るのは都合が良すぎるとも思いましたが、かといって。否定してどうなるものでもないとも理解できました。
しかし、それで待遇が変わる環境がある。
それを知った時、初めて父の言葉の意味が分かる気がしたのです。
その環境こそが教会であり、その教会は母となにか関係がある。
父の教会への険悪な態度は、それが原因なのではないか? そう考えたのが学園時代の後半。
何があったかは結局、当時には掴めないまま。
私は冒険者になりました。
教会へ潜入するつもりでしたが、父の横槍をうけ、致し方なく。
そこで先生と出会い、そのギフトの能力を知り、サルベージでドラゴンと会合し、語られる過去で加護というものの脆さを知った。
加護Lvは上下する。
それも、いとも簡単に。
そのことが1つの仮定を生みました。
それが母の加護Lvの低下。
ほとんど覚えてもいない実家での記憶の中に、それに近い言葉を聞いたような気がしたのです。
ですが、そうなると望福教と手を組むということは―――・・・・・・。