作品タイトル不明
side――ヨハン
先生に頼って貰えた!
僕の心はそれで一杯だった。
自分の過去と向き合ったわけじゃない。
家族や領地の事を考えて、思い出して決めたんじゃない。
ただ、生き方を教えてくれた人に。居場所をくれた人に。
恩返しがしたかった。
だって。
ここを逃せば、きっと―――・・・。
次の機会は来ないから。
僕が成長する頃には。先生は多分、僕の力を必要としない。
冒険者になって分かったことが幾つもある。
その中の1つが、戦うため力は思ったよりも使い道がないということだ。
自信にはつながるけど、だからって交渉が上手くなることはないし、それで得られる権利だって数えるほど。
でもそれを1番に求めてしまう冒険者という職業は、他者への貢献という意味では他の職種と比べて著しく劣ってしまう。
なぜなら自分が生きることで必死だから。自分達が生き残ることで必死だから。
もちろん、未来的に先生が立場や役職を手に入れれば、依頼という形で頼られる事もあったかも知れないし、護衛や納品とかもあったかも知れない。
けど、先生はそういう未来を望むのかな?
そう考えた時、もう次の機会はないんじゃないかなと思った。
先生はそんな顔をしていた。
それでも先生は優しいから、ちゃんと僕を止めようとしてくれた。
復讐であることを明かし、勝手を通すことで降りかかる実感を語り、その上で決断する勇気をくれた。
血縁なんかじゃなく、絆が僕らを繋ぐんだって。
嫌なら捨ててもいいんだって。
望むものを勝ち取ること。
以前の僕はそれができなったらしい。
だから捨てられた。
けど、そんなのは親の勝手な押し付けだった。
そんなものを信じるんなら、今度は僕が証明しよう。
僕が望むものを、望むことを手にすることで。
望福教なんて宗教の教えなんか、碌でもないものだったんだって‼
そんなことばっかり考えてた。
ううん。
それ自体が悪かったとは思わない。
でも僕には、僕を仲間としてくれる人達が居て。
その中でも特別な、最初から隣に居てくれたリミアが居ることを。
すっかり忘れていたんだ。
大切なことなのに。
僕にとっては望福教なんて存在は、ただの敵でしか無いけれど。
彼女にとっては未だ、加護教さえ信じていいものか分からないまま。
揺れ動く彼女の心に、1番近くにいた僕が気付くべきだった。寄り添うべきだった。
それなのに僕は・・・ただ、浮かれていたんだ。