作品タイトル不明
息抜く時
「「先生‼」」
再会の時。ヨハンとリミアが駆け寄ってくる。
その表情には喜びが確かに見て取れた。
そのことが後ろめたさを加速させる。
「・・・久しぶりだな」
最後に会ってからはまだ半年。それほど時間が経ってはいないのに、口から出たのはそんな言葉だった。
「これはまた随分と偉そうな登場ですねぇ? 約束も忘れていたくせに」
嫌味な言い回しをすると、どことなく上品な口ぶりになる変な癖は正しく懐かしいな。
2人の後ろから現れたジェイドを見てそう思う。
「約束か・・・なんのことだったか・・・」
「本気で言ってるなら、ぶん殴るぞ。勝手に帝国なんかに行きやがって」
「勅命だからな」
「自分から進言したって知ってんだよ‼」
「そりゃぁ悪かったな」
「アンタには俺様を認めるっていう大事な仕事が残ってんだ‼ 次はねぇからな‼」
まだまだ言いたいことがあると、ブツブツ言いながら離れるその背中は物語っていたが、気を使ってか一旦切り上げる。
「我が息子が失礼を――」
入れ替わりで会話に入って来たのはジェイドの父、ズダーク伯爵。
「閣下に頭を下げていただくようなことでは・・・」
「いいえ。貴方様は陛下のお客人。家主として、粗相があっては陛下に合わせる顔がございませんので」
「そのお心遣いに感謝を――」
俺はすかさず礼を返した。
そう、ここはズダーク家の邸宅だ。
年端もいかない子供2人に皇城は気後れするだろうという陛下の優しさにより、ヨハンとリミアはジェイドの実家に身を寄せていた。
ひとしきり儀礼的なやり取りを済ませて、2人と向き合う。
「先生! 僕達はどうすればいいかな⁉」
「わかってる・・・が、他にも話を聞きたいって奴がいるだろう」
「はい。そう思って既に声は掛けました。もう少しすれば集まるかと」
「なら、取り敢えず場所を移そう」
ズダーク家の使用人に部屋へ案内してもらう。
通されたのは外部からの介入を妨げる造りになっている屋敷奥の談話室。
中庭や多くの通路に囲まれているから盗み聞きも難しい。
普段から閣下が商談などの際にご自身で使われている部屋なのだろう。
「久しぶりにこの部屋へ入りましたが・・・こんなに狭かったでしょうか? 記憶と違いますわ‼」
「あの頃は私達が小さかったのよ。それにかくれんぼしてたから1人だったでしょ? 広く感じて当然よ。見つかって怒られたの忘れたの?」
「う、嫌な記憶が蘇ってきましたわ~‼ それとケイト‼ あの時は良くも放置してくれましたわね‼」
「謝った! あの時の私、謝ったもん‼ ほ、本に夢中になってごめんね‼ って‼ ちゃんと謝ったよ‼」
「許した記憶がございませんわ‼」
と、そんな部屋へ騒がしいのが入ってくる。
「早いな?」
「それはそうでしょ。私達も今はこの家に泊まってるから」
「一つ屋根の下ですわ‼」
「・・・ここにある本も読んでみたかったんですよね」
エイラ、キューティー、ケイト。
それに遅れて、
「普段から父上が使ってる部屋だぞ。散らかすなよ? 怒るからな・・・」
ジェイドもやってくる。
いくら幼馴染とは言え、
「刺されるなよ?」
「なんの話だよ?」
首をかしげるジェイドにこそ不安を覚えた。