軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

この手に願うは幸福か?

「ダンデよ。仮にそうなった場合、我が軍はどれほど持ち堪えられる?」

「投入される戦力にも寄りますが、敵が決死隊となっているのであれば、1月持ち堪えられれば良い方でしょう」

「その間に南北の辺境伯から援軍を募ったとして、戦況を変えられるか?」

「ゼネスの言う通り、本当に6つの領地の全領民が戦力となるのであれば、不可能と言わざるを得ないかと・・・老骨や赤子を弾いても100万は固い軍勢。それほどの数の不利があっては・・・」

「・・・当然ではあるか。しかし、そうであるからと言って、こちらから侵攻するのは現実的ではない・・・という話だな?」

「はい。それこそ迎え撃たれては手も足も出ません。敵の人命を無視するのであれば、釣り出した所を殲滅していけば数を減らせ、更には軍人から減っていくので戦闘経験の差を活かせる状況を作りやすくはなります」

「致し方なしとはいえ、その方法は避けたい所だな。宗教や信仰者を弾圧したいわけではないでな。なにより、精神操作の疑いがあるのなら尚更だ」

「立派な考えでは御座いますが―――」

「わかっている。理想論だということはな・・・いや、これ以上。民の心を離したくないという恐れかもしれぬが」

「陛下! 陛下は決して軽んじられてなど‼」

「良い。現状こそが答えだ。反逆という証拠を突き付けられているのだぞ」

それが全て陛下のせいかといえば、そんなことはない。

だが、反逆が起きているのは事実。

返す言葉は御父上にもありはしなかった。

「それよりゼネスよ。そなたは随分と落ち着いているようだが、なにか案でもあるのか? 説明の折からも焦りを感じているようには見えなかったが」

「そういうわけでは御座いませんが、この内乱を早々に終わらせる方法には心当たりがあります」

「現在の教祖を討ち取ること・・・だな?」

「はい。そして、そのために必要な駒があることも」

「駒・・・?」

「陛下。聞いたところによると内乱の重要参考人として、招集した人物がいるとか」

「うむ。確かに幾人かを勅命によって招聘したが・・・」

「その中にはルーヴェント家とルーフロンス家所縁の者が居ますね?」

「ああ、確かに居たはずだ。――ッ⁉ いやっ、しかしまだ子供だぞ⁉」

「存じています。ですが、これほど内情を知るものは他に居りますまい」

「彼らを駒として使うというのか⁉ あんな子供を⁉」

「彼らにも、この内戦に参加する理由はあるでしょう。もちろん強制はしません。事情を話した上で、対等に協力を持ちかけます。そこで了承を得られれば・・・という形にはなりますが、成功したなら別動隊として動かせるでしょう」

「だが、軍の戦力を割いては―――」

「その心配は御座いません。まだ確定したわけではありませんが、戦力なら用意できるはずです」

「・・・それで、どうするというのだ?」

「もちろん。強襲を仕掛けます」

俺は卑怯だ。

これほど卑怯なことがあるだろうか?

ルーヴェントとルーフロンスに所縁のある者というのは、ヨハンとリミアのことで。協力を~なんてのはただの建前。

俺が頭を下げれば喜んで協力してくれるだろう――・・・なんてことを俺は考えている。

俺はあいつらに親殺しなんつー巨大な十字架を背負わせようとしてる。

それが現実になるかどうかは置いても、その片棒を担がせようとしている。

自身の復讐のために。ただの感情の発露のために。

俺は教え子を。その関係を。利用しようとしてるんだ。

呆れるほどに卑怯じゃねぇか。

しかも、ありとあらゆる信頼を使って―――だ。

例えば陛下からの信頼。

どこから戦力を調達するのかを、俺は隠したまま話をしている。

これはもし戦力の確保を失敗したとしても、その事実を隠して強行するための布石だ。

どこから戦力を引っ張ってくるのかを知らなければ、陛下は俺にしか確認できず、俺が問題ないと。更にそのことを他の誰にも話していないと言えば、陛下は俺のその言葉を信じてくれるだろうという信頼を利用している。

例えば南の辺境伯の信頼。

以前に協力した義理や、娘のタン。その従妹らしい鼠の王を名乗るまとめ役からの願いを聞いて、領軍の一部を貸してくれたとして。

その戦力を無謀な強襲作戦に参加させるなんてことは知らない。

ヨハンにしても、リミアにしても、俺が戦力を用意していると言えば疑わないだろうという事さえも、織り込んだ上で。

それらの信頼を利用している。

俺の心内を覗ける者が居れば、そこまでしてやることなのか? と聞くかも知れない。

俺にはそれに対する明確な答えすら持ち合わせちゃいない。

だが、そうしなければ治まらない痛みがある。

そんな感情だけが煮え滾っている。

ただ突き動かされるように、俺は内戦への足場を組み上げる。

待望の、その瞬間だけを夢見て。