作品タイトル不明
その後になにが待ち受けようとも
「うむ、報告ご苦労。そして・・・聞いた通りである。その上でどうする? 取り得る選択肢はそう多くはないと思うが、そなたらの能力は特別だ。故に、協力して欲しい。必要なものがあれば手配もしよう。どうだ?」
「聞いた限りでは異議などでようもない対応だと、私は思うのですが・・・ゼネス。君はそうじゃないみたいだね?」
「・・・・・・・・・・・・妥当な策だと思います」
「ならば、何をそんなに気にしている?」
陛下からのご質問だ。答えないわけにはいかない。
いかない―――が、
「・・・そうか!」
場の邪魔をしないように存在感を薄めるが如く息を殺すマルチナの気配で気付く。
「む? どうした?」
「――マルチナ。1つ聞きたい」
「ッ⁉ な、なんでしょうか⁉」
「お前は・・・俺のためになら命を懸けて戦えるか?」
「えっ⁉ はいッ‼ もちろんです‼」
「・・・やっぱり、そうか」
「だからどうしたというのだ?」
無視するような形で続く会話に陛下が困惑してしまう。
「少し・・・考えが甘かったかもしれません」
「どういうことだ? 今のやり取りに関係があるのだろうが・・・」
「はい。順を追って説明します。まず初めに。望福教の教徒における習性とでも言いましょうか。教祖への盲信があります。それは今、ここにいるマルチナが証明してくれました。命を懸けられる――と」
そう言ってマルチナを指し示すと。マルチナは、はい! と胸の前で拳を握りしめてまで頷き、強く肯定する。
「それがどうかしたか? あまり重要なことだとは思えんが・・・」
国のために――そう考えて行動する皇族として、陛下には当たり前のように思えるかもしれないが・・・そんな忠誠心は本来そう簡単には芽生えない。
「いいえ、陛下。命を懸ける程の忠誠を集めるのはそう簡単ではありません。もちろん。口だけの忠誠や、いざとなった時に臆病風に吹かれることはあるでしょうが、信じるという言葉の前では全てが現実的ではないのです」
「何が言いたい?」
「つまり、彼らは理想を信じるが故、己の命に執着しない可能性があります。死をも恐れぬ特攻軍が押し寄せる可能性がある」
「馬鹿な⁉ そんなことがあり得るのか⁉」
「盲信というのはそういうことかと。それに何より、兵隊が軍だけとは限らないのです」
「軍だけではない・・・ッ⁉ なぜ、そのようなことが?」
「ここにいるマルチナです。この者は戦士でも兵士でもありません・・・が、先程も命を懸けるといったように、命令されれば戦うつもりなのです。しかも都合の悪いことに、このマルチナは向こうからすれば裏切者。使い捨てに選ばれるような木っ端の存在。そんな一般人でさえ、そのような覚悟をする。となれば、領民全員が戦闘要員と思った方がいい」
「まさかッ‼ 領民全員だと⁉ いったい何万人になると――⁉」
「ですが、あり得る話かと。敵は帝国すら乗っ取り使い捨てようとしていた可能性のある相手。どこまで手段を選ぶつもりがあるか・・・・・・」
「しかし、そのようなことになれば! 5千の兵で足止めなど⁉」
「出来るわけがない・・・でしょうね。とはいえ、あくまでも最終手段だとも思っています」
「最終・・・そなたなら、どの段階でその決断を下すと思う?」
「相手は既に1度敗走しています。いえ、皇城の前での件を含めると2度。恐らく3度目は我慢できないでしょう。第1陣が長引くようならすぐにでも。挟み撃ちで潰されようものなら、その時点で大きく舵を切るかと」
何が幸せかは自分で決めるべきだ。
だが、それを誰かに握られてしまったら、人は簡単に命を省みない兵器になり下がる。
この場合は書き換えられたといった方がいいか。
そうすることが幸せのためだと。