作品タイトル不明
side―――自由騎士・フリーダム3
恩人との再会。
これを喜ばない者などいない。
けれど、水を差されたのも事実だ。
原因は先日の件。
将軍はなにも覚えていなかった。
それどころか、そうなっていたことさえも認識できていなかったのだ。
俺の言葉であっても、最初から信用されるはずもなく、部屋を調べた時に見た手帳の中を言い当てることで、ようやく事態を理解してもらえた。
「まさか―――だが、そうすると・・・・・・」
それから将軍は、出来る限りのことを日記に記録していくようになった。ほんの些細なことであっても、必ず。
大した意味などないかと思われたが、なんと。それは大きな結果を残す。
同じくして、俺は軍へ編入されることとなった。
将軍の肝いりとして。直属の部下になったのだ。
冒険者として自由に生きる上で、S級になってから叩きこまれた礼儀作法がこんなところで役に立つとは思わなかった。
当時は窮屈だとしか感じなかったが、習得しておいてよかった。
先日のあの症状。
アレが出るのは帝王様と謁見した日ばかりであることが判明する。
つまり原因は帝王様の可能性が高い。
この根拠を確信付けるため、自分以外が謁見した日には、その人物の下へ部下を送り込むなどして情報を集めた。
部下というのは他でもない俺のことだ。
結論は黒。
帝王様と謁見をおこなった者・・・特に1対1で謁見した人物はかなりの高確率で、記憶の障害や特定の症状が出ていることを確認した。
「このことを公表するべきでは⁉」
「必要あるまい。それよりも、動機や期間を調べるべきだな」
「なぜ⁉ 帝王様は貴方や、多くの国民を利用している‼」
「王というものはそういうものだ。俺だって軍人だ。上から命令されれば、なんだってやるさ。例えば、他国への侵略戦争だったりな・・・」
俺はこの時に知った。
この人が将軍という地位を得たのは侵略戦争での功績であることを。そのことに後悔していることを。
土地を奪われた人々の結末を知り、土地を奪った人々の顛末を知り、そこから生まれたものが憎しみだけであることに気付いた時から、自分が生きていることに疑問を抱き続けてきた事を。
俺はこの時、初めて知った。
恩人がずっと、死に場所を求めていたことを。
それが事実の公表や自身の心配よりも先に、動機や期間を知ろうとした背景だった。
動機が気になるのは当然のように思うが、期間を気にするのはなぜか?
「もしかすりゃぁ、あの侵略戦争さえ・・・・・・」
その言葉の先は聞かなかった。いや、聞けなかった。
軽率な質問をしてしまった自分を恨んだ。
それと同時に、動機にも疑問が浮かぶ。
帝王様にはどんな考えがあるというのか?
国を豊かにするため―――大義名分はそんなところだろう。
しかし、あの症状が発生する前後には意識の薄弱が確認され、その状態であれば。どんな命令であっても従ってしまう危険性があった。
それを利用してまで戦争を仕掛ける実利とはなんだ?
それがなければ戦争など起きるはずがない。
そう思って調べ尽くした。
戦争の利益だ。軍に情報が入ってこないはずがない。
軍資金の帳簿や敵国の情報、周辺国の情勢、国内外の需要の変遷など。
ありとあらゆる方向から探ってみたが、これだと言えるものは無かった。
そこで思い出した。
今、帝国を支配している得体のしれない何か、の存在。
それはもしかして、帝王様さえも・・・・・・?
ずっと、逆だと思っていた。
帝王様がなにかの力を使って支配を強めているのだと、そう思っていた。
それがなんなのか、わからないのも帝王様の力の、権力せいだと。勝手にそう思っていた。
だが、もし―――それが逆だったならば?
あの症状が繰り返されると、時間や効果が大きくなることは既に確認している。
そして、その筆頭は将軍だと考えていたが、もし帝王様であったなら?
それはいつから? あの戦争は? 将軍が抱えた業とは何だったのか?
どんどんと疑問が溢れてくるが、それ以上に迫る問題があった。
時間がない‼‼
背筋を貫く不安は的中する。
最悪は、実現される。