作品タイトル不明
目の敵の眼
「教祖ですって?」
真っ先に反応を示したのは偉そうな女。
「知らねぇわけねぇよな?」
「もちろん知ってるわよ? でも、それなら見当違いね。ここには居ないわ。残念ながらね。だってそうじゃない? どっちが帝王・・・女帝にふさわしいかを決める場に、教祖なんて相応しくないでしょ? だから居ないわ」
平然とそう言って返す。
それはあまりにも、あまりにも予想外だった。
「あら、変な顔。でもわかったなら出て行って頂戴? 部外者は、ここには必要ないの」
・・・部外者。仮にも後ろ盾じゃねぇのか? それとも、本気で利用されてるだけ?
「待てよ――。だったら、その女はなんだ? そっちのデカブツが将軍なのは知ってるが、その女は相応しい役職についてんのか? そいつも、部外者じゃねぇのかよ?」
「・・・はぁ~。アタシは今でもお姫様なわけ。わかる? 付き人くらい、居るに決まってるでしょ?」
「そいつである理由は?」
「理由? そんなのないわよ。どうだっていいでしょ?」
どうだっていい? 部外者は出て行けと言いながら、理由もなく連れ歩く従者。その素性も、能力も無視したような発言には、流石に違和感がある。
場にいる人間に強くこだわる性質を持つような奴が、自分の従者に対して無頓着でいられるわけがない。
より強い、執着のようなもので選別してるはずだ。
出自、血統、思想・・・それこそ宗教とかな。
信じるものが重ならなきゃ納得できない人間。そうでもなけりゃ、誰が居ようと気になんざしねぇだろう。
なぜなら、そこにいる従者がこの国の人間ですらねぇんだからな。
機密だとか、常識を持ち出すことは不可能。
あの女がローランであるなら、従者として共にした時間さえ短い。
それを無視して、他の人間を部外者だなどと切り捨てたりは出来ない。
「どうだっていいわけねぇだろ? その女の名は? 従者になった経緯は? この国の人間を差し置いて、そいつを身内にする意味は?」
「はぁ? ・・・ああ‼ アンタ、仲間になりたいのね? 教祖を殺す~~とか言ってたのは、教祖になり替わってアタシの側に付きたかったから。そうならそうと言えばいいのに。アタシは能力があれば認めてあげるわよ? この子もそう。凄いの魔法使いだから仲間にしたのよ」
人の神経を逆なでするように話す女。
気取った態度で、舐めた声を出す。
わざとらしく見せつけるように、後ろに控えた女にしなだれかかり、自分のものだと主張する。
ふざけた文句を垂れながら―――。
凄い魔法使いだから仲間にした。違うだろう? いや、違わないのか。
ローランは確かに優れた魔法使いなんだろう。それも、精神を操る魔法の。
つまりその能力を、効果を。体感したから手元に置いている。
いとも簡単に支持者が増えるんだ。コイツからすればこれほど都合のいい存在もいない。
だが、ローランを扱うには教祖という命令装置が必要になる。
そうでなけりゃぁその優秀な魔法使いが言うことを聞くはずがねぇから。
それを成し得るのは望福教という団体が、トーの大切なものを掌握し、脅しているからに過ぎない。
コイツ自身が教祖でないなら、ローランは仲間と呼べやしない。
その前提を覆すには、残すはローラン自身が教祖だという可能性のみ。
どちらにせよ。コイツは嘘を吐いている。
教祖が居れば、居ないと言ったのが嘘に。教祖が居なければ、ローランを仲間と言ったのが嘘になる。
ローランが仲間を人質に働かされているという前提であれば・・・だが。
「てめぇの仲間にだと? ふざけたことをぬかすんじゃねぇよ。そいつも、そう思ってるだろうよ。じゃなきゃ顔も名前も伏せねぇだろ? 仲間だと思われたくねぇから以外に理由があるか?」
「へぇ? 言ってくれるじゃない? じゃあ、はい。自己紹介なさい」
そう言われた瞬間、顔を伏せていた女がスッと姿勢を正し、息を吸い込む。
さぁこれではっきりするはずだ。
お前の眼は、どっちだ?