作品タイトル不明
執念こそが楔
5階より上は王族の住まう場所。
だからだろう。地図にも5階以上の詳細は記されていない。
この階段も5階で途切れているせいで、本当は何階まであるのかさえ不明なまま。
「どっちへ行くんですか?」
「こっちだ」
「なにか根拠でも? 地図にさえ、なんにも載っていないんですよ?」
「カーナの魔力反応がある。それにこの階段は、客として泊まっていた貴族を秘密裏に帝王の下へ運ぶためのもんだろう。だとすりゃぁ正面は寝室だ」
「招いた貴族を? なんのためにそんなこと・・・? しかも、寝室って」
「ガキはまだ知らなくていい話だ」
「この僕に現実を突き付けようとしている癖に子供扱いですか」
「お前もそのうち嫌って程やらされるだろうからな。今知る必要はねぇよ」
首を捻るライザードへ適当に答えて切り上げる。
それが気に入らなかったのか、ライザードがマルチナから真相を聞き出そうとするが、マルチナもマルチナで言葉を濁すため意味はなかった。
お手付きだの、子孫繁栄だのと説明するわけにもいかねぇとの判断だろう。
カーナの魔力を辿っていくうちに、気になることがまた1つ増えた。
この階層には、あまりにも人の気配がねぇ。
一緒に突入した連中はどこへ行った?
連れたままか? それとも4階に置いてきたか?
あるいは―――・・・。
警戒を強めながら進んでいくと、もうカーナの魔力反応まで扉一枚というところへと来てしまった。
そして。灯りの漏れるその扉越し、途切れ途切れに声が聞こえた。
「なぜ――・・・したのです⁉ そんなこと―――・・・‼‼」
「・・・・・・からに決まって、でしょ? だって、そうしない―――」
「――その結果が・・・ですか?」
「そうよ! でも――・・・じゃないわよ?」
「――ですね。あくまでも・・・・・・」
内容まではわからねぇが言い争ってるのは間違いねぇ。
聞いた覚えのねぇ声が2つに、聞き覚えのある声が2つ。
片方はカーナとフリードリヒ。
となれば、残りが対抗の姫様と・・・どこぞの教祖である可能性が高い。
この扉は重い。
重い決断が伴う。
最悪の予想が当たっていた場合、俺はヤーレン達を裏切って、その仲間を手に掛けることとなる。
そんな覚悟を持たなければ開けられない扉だが、その重さを克服するのは一瞬だ。
俺の中にある天秤は、命より重いものを知らねぇ。
だから、命の支払いには命で贖ってもらう。
ギィと両の扉を押し広げ、俺はその空間へ割り込む。
瞬間。
一斉に視線が集まる。
「あっ・・・・・・!」
「・・・ようやく来たか」
「誰? 今この場に居ていい人間なんて、もう居ないんじゃない?」
「姫様のおっしゃる通りかと・・・」
眼は―――⁉
断りも無しの乱入で視線が集まることを好機に。
即座と確認するが、驚いた表情を見せるカーナと嘆息するフリードリヒ。
更に、見下すような表情で姫様と呼ばれた着飾った女の瞳は人の眼だ。
ただ1人。
顔と目を伏せている女を除いて、全員の眼が確認できた。
出来てしまった。
残ったのは恐らく、態度や言動からしてローランで間違いない。
「悪いが暇じゃねぇんでな。用件だけを伝えるぜ?」
竜の眼か、あるいは教祖だという証拠が出た時点で。
「どこぞの教祖を殺しに来た。さっさと名乗り出てもらおうか」
それが誰であっても、俺はそいつを必ず殺す。