作品タイトル不明
帝国へ。三夜
「で、精神魔法への対策ってのはなにをやらせてた? 強襲するにしても、その程度は擦り合わせておかねぇと同じ轍を踏む事になるぞ?」
「うむ。精神保護魔法を使っていたはずだ。知っておるな?」
「耐性上昇よりはマシだろうが・・・単品じゃどうにもならねぇってことか。つっても、こっちじゃ宗教は広まってねぇんだったな。それじゃぁ、祈祷品なんざ数を用意できねぇか」
「布教を制限しているわけではないので、存在せんではないが・・・数はな。時間がありさえすれば、なんとかなったやも知れんが」
「敵が待ってくれるはずもねぇわな」
「精神性を問う宗教が、その精神性で攻めてくるとは想定していなかった。その対抗策が宗教になることも・・・皮肉なものだ。いや、だからこそ――なのかも知れんな。力ばかりにかまけ、民を見てこなかった帝国という国の在り方が問題だったのだ。急速に成長したが故に、置き去りにしてしまったものが多すぎた」
「反省は後で勝手にやってくれ。それより問題の解決だ。ここにいる程度の人数分なら、精神保護も防護も用意できるが、軍の装備はどうなってる?」
「突入予定の部隊数分は確保してある。数は全部で200。実力についても選別済みだ」
200・・・ね。
局地戦として見れば少な過ぎはしない人数だが――、
「敵の数は?」
「詳細は不明だ」
「なら聞き方を変える。政務に残った連中の人数は?」
「・・・・・・・・・およそ50人ほどだ」
「城に常勤していた衛兵の数は?」
「勤務が150。待機が75。同じく休務が75。足して300だ」
「政務の連中もいれて350人が操られてる。っつーことは、それだけの数を操れる敵がいるってわけだ。精神操作魔法は余程の力を持ってない限り、1人を操るのに1人以上が必要だ。教祖をその例外にしても、近い人数が城の中に居ると考えるべきだな」
俺とジーナが皇都の軍施設で精神魔法で操作を受けそうになった時のことを思い出せばわかるが、術者こそ1人でも。対象の注意を引く役や、魔法を掛けるための人手が必要になる。あの時は4人居た。この4人は使いまわしが利くとは言え、同時進行を考えればそれなりの数が用意されてるはず。
別の方法として、術者が1対1で直接魔法を掛けることも出来るが、その場合は精神魔法を使える奴が200人ほど要る事になる。
常勤に政務と警備が合わせて200人居るからだ。
取り逃しがあれば破綻する計画だ。時間を与えないためには、違和感を抱かせないためには、それぐらいの数が必要になる。しかも、その全員を同時に呼び出すような策もだ・・・・・・が、流石にそれはねぇだろう。
と、なれば―――だ。
術者とその協力者。更には操られた手勢を合わせると、敵の数は600~700人前後ってところか。
それに比べてこっちは200。
城の中でぶつかるんだ。総員が直接殴りうことはねぇだろうが、それでも。差は歴然。おまけにこっちは対策をしていようとも、精神操作魔法には怯えなきゃならねぇ。既に1度。対策が破られてるわけだからな。
「ゼネスさん。予測でいい。敵の数はどれぐらいになると思ってる?」
同じく状況を聞いていたサンが、口の重い将軍ではなく俺に聞く。
「少なくともこっちの3倍以上はいるだろうな」
「3倍・・・ッ⁉ 3対1以上ってことか。曲がり角や、通路、部屋の入口みたいな狭くなっている場所で戦っても、3人相手は厳しいな。そういう場所にも限りがあるだろうし、なにより・・・こっちから乗り込むんだろう? どうやっても遭遇戦に近い状態になる。そうなると有利な場所でなんか戦わせてもえらえないぞ」
「それどころか。侵入口が1箇所だった場合、200人全員が入り込む前に塞き止められて終わりだ」
穴が1つなら塞げばいい。そう難しいことじゃねぇ。ま、そんなことぐらいは気付いててもらわなきゃ話にならねぇが。
「それはいらぬ心配だ。わかっているだろうが、城へは隠し通路で侵入する。そのためにここへ呼んだのだからな。経路は8通り。我々は上層階へ直接の侵入を試みる。200人の部下達には悪いが囮となってもらい、その間に蛇の頭を落とす作戦だ」
「それでも戦力差は3倍だ。どう埋める?」
「古典的な手ではあるが。夜襲を仕掛ける。城門裏から仕掛け、扉を開ける素振りから入ることで注意を外に向けさせる。外には突入組以外の、選ばれなかった部隊を待機させることで本気を窺わせる。こうまですれば、予備戦力を全てとは言わずとも、ある程度は釣り出せるであろう」
「わかりやすい手だが、悪くない。残りはどうする?」
「出来る限り散開させ、城内の各地で騒ぎを起こさせることで連携、連絡を阻害させる」
「・・・・・・それじゃダメだな」
「なぜだ?」
「真実味に欠ける。なにより、下手にかく乱するとあぶれた連中がこっちへ流れてくる可能性がある。外の大部隊を本隊に見せかけたいなら、そのための動線を用意するべきだ。中に入り込む部隊には、城門から城主へまでの道を敷かせろ。ド真ん中に一本。ドデカい花道を作る感じでな」