作品タイトル不明
帝国へ。三語
そろそろと、一際に目立つ光源へと近付くと―――そこには、
「協力者の方ですね? お待ちしておりました!」
帝国軍人と思しき青年が1人。窪んだ壁際で門番のように立っていた。
「カーナの使いか?」
「姫様・・・というよりは将軍の、でしょうか?」
「よく俺達がここへ来るってわかってたな?」
「ここが一番近い入り口から入ったという連絡があったので!」
「本当に⁉ それって橋の下から穴に入る所を見られてたってことだよね? 誰もいなかったと思うんだけど・・・」
「ここにはここの、独自の連絡網や監視地点がありますから」
俺の代わりにサンが驚いてくれたが・・・。
「ここ――ってのは、その先のことか?」
俺が指さしたのは青年の後ろにある通路だ。
手前に明るい光があるせいで奥までは見えないが、確かに通路がある。
「はい! そういうことになります!」
「なにがある?」
「街・・・と呼ぶにはちょっと苦しいですが、人の住む場所があります」
「こんな地下にッ⁉」
またしても、感情表現をサンが代わりを務めてくれる。
「信じられませんか?」
「信じられないさ! 1日や2日の仮拠点ならまだしも、定住なんだろう⁉ 極限になった冒険者だって、洞窟には住まないぞ⁉」
「ははは! それは洞窟が危険だからでしょう? ここは少々汚いですが、身の危険はありませんから。暗いことにさえ目を瞑れば、帝都外へ移り住むよりはマシというものです」
そうあっけらかんと言い放つ青年を見るに、
「他所で言う貧民街ってところか」
「ああ! そうですね! 違いがあるとすれば、町の中心から近いので情報や物を取りやすいところですかね? 大規模な運搬は難しいですが、その日を生きる分には困りませんね」
内情を知りすぎている。となりゃぁ、その正体は簡単だ。
「なるほど、ここ出身か」
「はい! なので、案内して差し上げろと・・・それで、お連れ様はどうしましょうか?」
「事情を伝えて連れてくる。馬車も通れるのか?」
「もちろんですよ! 道は広いので。あっ! でも、途中は緩やかな下り坂になっているので、そこは注意するようにお伝えください!」
軽く手を振って了解を示し、ヤーレン達を迎えに行った。
「これは・・・・・・驚いたな。本当に人が住んでる」
「そうですネー。それに思っていたよりハ、秩序的ですヨ」
「なぜわざわざ、こんな暮らしをしているのでしょう? それにこの規模。国が開発したのでしょうか?」
「もしかしたら、ゼネス様のような指導者が居たのかもしれませんね!」
青年の後を追い、訪れる事となった地下街に。それぞれの感想が零れる。
確かに人は住んでいるし、無法でもなく、予想を超えて広い。
「この街にも重役は要るのか?」
「お役人様は居ませんし、来ませんよ。こんな所へは・・・来るとすれば、変な将軍様ぐらいですかね」
「フリードリヒ、だったか・・・」
「はい。親しい関係・・・なのですよね?」
「どうなんだろうな? 過去には同士だった気もするが・・・いつの間にか、消えてやがったからな」
「まぁ、変な人ですからね。あの人は」
こんな所へ顔を出しては、住民を気に掛ける人ですから。と青年は続ける。
本当に、自由騎士を名乗った男がなにをしているのか。
その根源がこんな所にあるのか・・・。
だから今、将軍なんてしてやがるのか。
そんな泡沫に思いを馳せている隙に。
青年は仲間達に奪われていた。
やれ水はどうしているのか、だとか。やれ仕事はどうしているのか、だとか。やれ町の連中からはどう思われているのか、だとか。やれ町の運営は誰がしているのか、だとか。質問攻めにされている。
青年はそれにわかる限りで答えていた。
水は下水と合流する前の地下水脈から拝借している。仕事は色々あるが、軍人になるのが一番早い。いい顔はされない。どころか、貴族街に寄り付こうものなら殺されてしまう可能性もある。長老もいるが、大きなことを決めるのは将軍。などという答えを返していく。
そんな中の1つに、ライザードの疑問。
「この場所が発展した理由とはなんでしょう? 偶然・・・というわけではありませんよね?」
「元々この場所は浄化装置の技師が休憩のために作ったそうです。ですが、その技師は修繕や補修の時にしか来ませんから。そこへ、行き場をなくした人が住みついたのが最初だと聞いています。それと――」
それに対して、丁寧に答える青年の声を遮る人物が。
「――予想よりも遅かったな。なにかあったのか?」
「将軍‼ すみません‼ 少し話が弾んでしまいました‼」
それはさっき話題に挙がってた張本人。
フリードリヒ将軍だった。