軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

帝国へ。三列

今は帝都の外周を移動しているはず―――なのだが、

「フッチ。本当にこっちであってるか? やけに人が多いような気がするんだけど?」

進んでも進んでも、周りの人数が減らないことに、馬車の小窓から御者台に座るフッチへ、サンが苦言を呈す。

それも当然だろう。普通なら、どれだけ賑わっている都であっても、外周部の人気は少なくなっていく。場所によっては貧民街などが出来上がっていたりもするんだが、そういう事もなく・・・ただただ綺麗な街並みが続く。

「そのはずだよ、リーダー。人が多いのには、何か理由があるんじゃない? そこまでは聞いてないけど」

フッチはなにか理由があるんじゃないかと返すものの、確たる情報はない。

「この先にある市場トハ、どういった趣向のものなのカ、分かりますカ?」

「ごめん。詳しくは聞けなかった。外から来た人が開く市場があるって言ってたから、蚤の市じゃない事だけは確かだよ」

「イエ、それだけでも十分ですヨ。でしたら滞在期間を直接、店主に聞くだけですカラ」

「数日でも、分かることはあるだろうしな。ただ――」

御者台でフッチと隣同士話すヤーレン達の会話に、どうも引っかかる。

「どうしましたカ?」

「外から来た・・・ってのがな。気になってるんだよ」

「そうですかネ? 出張販売など、よくあることかト思いますガ?」

「それはそうなんだがな・・・」

言っていることはわかる。

農作物など。都で流通しているものは、そのほとんどが地方で作られていることなど百も承知だ。それらを売りに来る商人がいることも。

だが、この違和感はフッチの言っていた”何か”と繋がりがある気がする。

なぜなら。農作物の販路など、既にあって然るべきだからだ。それらを扱う店など、幾らでもあるだろう。

なのに、だ。こんな都の片隅の広場に、人が群がるほどの市が開かれてるはずがねぇ。考えてもみろ。

例え幾ら値段が安かろうと、使い難いだろう? 通い辛いだろう?

近所の人間に人気――程度なら妥当だが、こんな大人数・・・・・・。

それともこの光景が、帝国ではありきたりな日常なのか?

分からないことが多すぎて、そういった判断に困ってもいる。

「あ、見えてきたね。アレだよ。リーダー」

そんな考えもよそに、フッチが正面を指差した。

馬車の小窓からじゃ見辛いが、大きく曲がった道の先に、それらしい空間が広がっているように思える。

が、そこにも相変わらず人、人、人。

「馬車の置き場があればいいですけどネー・・・」

あまりの人だかりに、うーんと唸り、悩みを口にするヤーレン。

このままだと俺達は、馬車であの中に突撃することになるんだが、それは流石に迷惑を極めすぎるなと。心が一歩引ける感情で一致した。

「どうにか場所はあったが・・・」

「早く聞き込みを終わらせて帰らなきゃね」

「そうですネ。あそこに残ってくれた皆さんを待たせるわけには行きませんヨ」

広場に入ってすぐ、中途半端に開いた横の空間に馬車を止め、そこで俺とヤーレン、フッチを除いた全員が残る形で別れることにした。

サン達には馬車の点検と称して、格好を整えた時間稼ぎをしてもらい、俺達はその間に停泊できそうなところを探すという算段だ。

ちなみにライザードとマルチナにはなんの役割もない。敢えて言うなら、そこに存在しているだけで我がままなボンボンとその使用人達って構図が出来上がるから、好きに振舞ってくれりゃぁそれでいい。

ライザードに対しては俺以外全員が常に敬語だしな。ボロも出にくい。

その分、ライザードは周囲の注意を引き、嫌われるかもしれねぇが・・・そうそう帝国なんぞに来ることはねぇだろうし、来たとしても。その時には成長した後だ。同一人物と気付かれることはねぇさ。この場所で、急に取り押さえられたりなんざしなけりゃ――の話だが。

「じゃあ僕はこっちから回るよ」

「デハー、ミーはこちらからにしますネ」

「そうなると俺がド真ん中か・・・」

並ぶ屋台の列をそれぞれ示して宣う。

3人になったとはいえ、ごった返す市場を3人で固まって回るのは非効率。ましてや人様を押しのけて回る理由もない。だから、別々に回るのはわかる。

が、なんでまた俺が中央とかいう一番面倒な、人で埋め尽くされている道を行かなきゃならねぇのか。

そこは商人同士お前が行けよ! とヤーレンに対して思うが・・・、

『我が部族の仲間が本当に居て、誰かになにかを伝えようとしているのなら、賑わう中でも埋もれにくい隅の方を選ぶトー、そう思いますカラ』

先にそうも言われちゃぁな。

それでフッチと比べて――ってなりゃ・・・ま、俺になると。

こういう市場での場所取りは年季がモノを言う。であれば、俺の責任こそが重大だってわけだ。

市場に消える2人の姿を見送りながら、気の重い足取りを進める。