作品タイトル不明
帝国へ。三台
帝都。
これでもかとそびえたつ外壁と、厳重な検査を超えてこそ入れる帝国の都。
街はずれでさえ華々しく、数えきれないほど多くの往来を確認できる。
それは人に限らず、物も相応に含まれており、荷物を積み上げた荷車や、一抱えはあろう商品を手に歩く人々もいた。
「これは・・・皇都よりも人が多いかもしれませんね。それともなにか、お祭りでも開かれているのでしょうか? これが日常のことだとすれば、凄いとしか言えませんね」
真っ先にその光景で圧倒されたのはライザードだ。
まぁ、人混みとは縁遠そうな人生だしな。
「祭りか。そんな話はあったか?」
「イエ、これと言って。ですガー、今は帝王様不在。混乱の渦中ですカラ。街はずれの方が賑わうのかも知れませんネ」
「そうかもな。それが暗殺ともなれば、中央から距離を置きたいと思ってもおかしくはねぇ。下手に近くにいて、犯人かと疑われるのも損だ」
「そこに商機を見出す人間もいるでしょうカラネー。ある意味、一種のお祭り状態とか言えますヨネ」
俺達はそんな面を喰らったライザードに説明しながら、ただただ人を数えていた。この中から特定の人間を探すという行為の難しさを再確認するように。
「ゼネス様。どうしましょう? これほど人が居る状態だと、馬車のままでは身動きが取れません。かといって――」
「アイツらと合流することを考えると、最悪荷物は置き捨てになるかもしれねぇ・・・と」
「ミーはそれでも構いませんガー・・・」
「サンパダさんも出発前に、乗り捨てになっても構いませんと言っていたよ。皇王様が補填してくださるだろうって」
それなら安宿や簡易の貸倉庫でもいいか。
「なら、取り敢えず身軽になりに行くか。心当たりはあったりするのか?」
「残念ながら、ですヨ。今までは後ろ盾がありましたカラ。政府のお膝下にお世話いただいてましたヨ」
「高級店でもなく?」
「ハイ。監視の意味もあったかト」
だったら、そこの世話になるわけにはいかねぇな。
「組合の方には頼れねぇのか?」
「その組合こそガ・・・ですヨ」
「癒着か。デカい金が動くんだ。不思議じゃねぇわな・・・しっかし――」
安宿を探そうにも馬車3台引き連れて、この人混みを回るのは現実的じゃねぇ。積み荷を考えりゃぁ、そこらへ捨てておけるものでもねぇし、どうしたもんか?
「それならいっそ市場の方へ行ってみないか?」
逡巡の間をサンが埋める。
「市場へ、ですカ? 出店はできませんヨ? 申請していませんカラ」
「そうじゃなくて、そこなら他の人達がどうしているのかと思ってさ。同じ場所が使えなくても、情報ならありそうだろ? 常連なんかは特に、詳しそうじゃないか」
蛇の道は蛇か。相手が商人なら情報を買い取ることもできるだろうし、安直な発想だがいいかもな。時間もそうはかからねぇ。
「いい案だが・・・ヤーレン。市場の場所はわかるのか?」
「組合に商品を卸していましたカラー、すみませんガ・・・」
「ああ、それなら大丈夫だ。今フッチが調べてくれてる。直ぐにわかるよ」
いうや否や。
「あっちだってさ。それより邪魔だから早く動いてくれって」
頭まで外套に隠したフッチが現れて言う。
その言葉に従って、俺達は市場を目指した。