作品タイトル不明
帝国へ。三様
「そういえば――最近は色んな人が帝国へ来るようになったね。先代帝王様には悪いけど、やっぱり外国と取引ができると収入が増えていいね。新しい帝王様が誰になるかは分からないけど、できればこの調子のままがいいよ」
それは帝都を目前にした町での、何気ないやり取りから出た一言。
「オヤ、外の国から来たミーがいうのもなんですガー、ここまでに外国の方は見ませんでしたネー。参考までにどういう人が居たカ、教えていただけませんカ? 商売敵だと困りますカラ」
「ああ、そうだね。アンタ達からしたら、そうなるかもね。とは言っても、あんまり詳しくないんだけどね。共和国から来たみたいだよ? 服装がね。アンタほどトンチキじゃなかったけど、皆でお揃いの飾りをつけてたから、よく覚えてるよ」
「ソレはどんなモノでしたカッ⁉」
「どうしたんだい? そんなに焦って・・・そうだね。おや? アンタの付けてる羽飾りに似てた気もするね。でも、何か違うね」
「羽の色ですカ⁉ 玉の色ですカ⁉ それとも形でしょうカッ⁉」
「あー‼ そうそう、羽の色とぶら下がってた飾りの形が違ったよ。羽の色は確か黒だったね。形は丸じゃなくて四角っぽかった気がするよ」
そんな会話を引き出した朝から、日が落ちるまで。
「それからどうだ? 情報は」
「芳しくないですネー・・・あの方が言うには、帝都で見たとのことでしたガー・・・同じような証言がありませんヨ」
「そいつは厄介だな。嘘かどうかさえ分からねぇ」
「見間違えでなければ、あんな嘘を吐く理由も思いつきませんガー・・・」
俺達は朝、世間話から手に入れた情報に踊らされていた。
理由は1つ。
黒い羽根だ。
ヤーレンの部族には黒い羽根を飾る習慣はないそうだ。
白、茶、灰。それらが混ざった羽根か、白の羽根を赤、黄、緑に染めることはあれど、黒は不吉をもたらすという言い伝えから、縁起が悪いと避けられているらしい。
くっついている飾りの方には四角が存在するってことで、本当に黒い羽根だったのかを確認したかったそうだが・・・続報は無し。
「じゃぁ逆に、黒い羽根を飾るような理由は思いつかねぇのか?」
「部族の教えで黒は死を意味しますカラ。身に纏うようなことハ―――」
「その覚悟を決めたか、あるいは決めなきゃならねぇ状態になったからって可能性は?」
「その場合デモ。幸運を意味する白か、勝利を祈願する赤を使いますネ」
ま、験を担ぐって考えならそうなるか。
「見間違いだとして、あるとすれば灰になるか。暗がりや影下で見りゃぁ黒くも見えるだろう」
「灰は注意、隠匿、変調のような意味ですガ、どうもしっくりと来なイ」
「そこまでおかしいとは思わねぇがな」
「イエ、灰の羽根は身に着けるというより、贈るものなんですヨ。それも忍ばせてネ。意味を知っていれば、それを見るだけで意図が分かりますカラ。なのに、それを見せびらかすように身に着けるとなるトー・・・」
「俺達――いや、アンタへの警告か?」
「どうでしょうカ? こちらの存在がある程度バレているとシテ、我が部族の人間から見て、ミーの存在に気付ける要素があると思いますカ?」
「難しい質問だな」
答えるとするなら、無くは無い・・・・・・程度か。
その部族の連中が誰かに命令されているとして、そいつがわざわざ『お前らの部族の人間が探しに来たぞ』なんて教えるか?
相当性格が終わってりゃあり得たかもしれねぇが、魔法で精神を操作しようって奴がそんな真似はしねぇはずだ。下手すりゃ魔法が解けるからな。
そう考えると、誰に意図を伝えようとしているのかが分からなくなる。
なるほど、ヤーレンの言う通りしっくりと来ねぇ。
「他に考えられるとすれば、精神操作の魔法が掛けられてないっつー主張か、もしくは操作されてる仲間を助けるための作戦が展開されてるとかか」
「それなら納得はできますネー。とはいえ、心配ではありますガ」
「焦るなよ?」
「焦りますヨ。デモ、迂闊には動かないと約束しましたカラ。焦るぐらいはいいですヨネ?」
耐える男のその問いに、否と言える奴などいない。
帝都はもう目前。
なにが正解かはわからねぇままだが、目的だけは決めてきた。
どうなったとしても、これまで通り。
後悔だけはしないように選び取るだけだ。