作品タイトル不明
帝国へ。三振
特に目新しいものもない風景。
どんな国でもこの辺りは変わらないんだろうと、そう思わせる屋台の列に挟まれた道。その間で人を押しのけるようにして進んでいく。
雑踏に埋もれながら歩む先に、望む商品があるわけでもなし。冷やかし程度に声を掛けては次の店へと目指す。
「馬車を預かってくれるところだあ? 今はどこもいっぱいだろうよ」
「新しい帝王様が決まるまでは空かないんじゃないかね? なにせ稼ぎ時だ。親交があれば、他は入れないでいてくれる所は多いよ」
「顔なじみでもなければ、今に急にというのは無理があるでしょう。紹介ですか? 残念ながら・・・」
「それこそどっかの商会に面倒を見てもらったらどうだ? 今はなら何でも売れるぞ? 買い叩かれるかもしれねぇがな!」
「どっかの貴族に売り込むとか、どうかしら? そうじゃなきゃ、無理よ」
片っ端から聞いてみるも、無残な結果に終わる。
つっても、予想通りではあるがな。
この混み様だからな。予約も無しの飛び入りが出来る宿なんざねぇだろう。だから伝手を借りようと声を掛けてるわけだしな。
しかし、都合よく色好い返事・・・なんてもんはねぇんだよな。
どいつもこいつも一瞬しか考えやしねぇ。いや、それだけ足元が固まってるってことなんだろうが。
そこから出てくる代案が、商会だの、貴族だの・・・―――。
言外にそれができないならそっちが悪いと、そう言われているようだった。
わかるけどな。商会なんぞは真っ先に思い浮かぶ。だからヤーレンにも聞いたが、組合が癒着してると言われるとな。
そんな商品を他の商会に持ち込むわけにはいかねぇだろ。
貴族の方は論外だ。
カーナや将軍にでも言えば、関係のある屋敷に入れてもらえるだろうが、そんなことすりゃぁそれこそ、今までの茶番はなんだったんだって話になっちまう。
それと関係なく本気で売り込んだとしても、身動きが取りづらくなるのは明白。その上、敵味方もわからねぇ状態だから、最悪。敵地のド真ん中――なんつーこともあり得る。
考えるだけで嫌になるなと首を振って、更に聞き込む。
「どうしてもってんなら、もっと町の中心へ行ってみな! あ、と言っても間違えるなよ? 途中の橋は渡るな。坂は下れ」
そんな中、訳知り顔のおっさんが含みを込めて言ってきた。
「ニオイには気を付けろよ?」
そのニヤケた面は気に食わなかったが、どうしても伝手は借りられそうになかったため、致し方なく町の中心へ行くことも考慮に入れて、合流する。
「収穫は?」
「もう少し行けば広場があるんだってさ。1日ぐらいなら見逃してもらえるかもな・・・って言われたよ」
「やはりといいますカー、大半が出張販売のようで。横入りは出来そうにありませんネ」
「部族の方は?」
「共和国の人間がいるっていのは、本当みたいだね。といっても、団体で何かしているとかじゃないのか、前より見る――ぐらいの話みたいだ」
「こちらハー、同じような目撃談を聞けましたヨ。ただ、変わらず灰の羽根だそうでしテ。お客の中にそういう飾りをした人が居たんだトカ・・・」
俺の方でも一緒に聞いてみたが、似たような返答だったな。
そう言われれば見た気もするが、覚えてはいない・・・確かに、こんだけごった返してりゃぁ覚えてなくても無理はねぇ。
「じゃぁ、まぁ・・・取り敢えず、町の中心とやらに向かってみるか?」
「他にないんじゃ仕方ないね」
「道はどうしましょうカ? この人だかりを馬車で抜けるのハー、忍びないですヨ」
「停めてあるところから少し戻って、大通りを進めばいいらしい」
「それなら僕は、その大通りとやらを先に確かめに行くよ」
「お願いしますネ。曲がり角で待っていてくださイ」
言うが早いか、行動に移る。
それにしても、ニオイ?