作品タイトル不明
帝国へ。二人
「ってな感じだったな・・・予想通りと言えばそうなんだが、やっぱ敵の動きについてわからねぇことが多すぎる。竜の眼の目撃証言すらねぇままだ。モンスターの襲撃がなくなるわけでもねぇし、ヤーレンの部族さえ――ここまでくると、自由騎士フリーダムの謎を明かした方が速いんじゃねぇのかと思えてくるな」
「帝都にあるという城の攻略にまつわる謎を・・・ですか? 皇城に住んでいるこの僕であっても、城の秘密なんて大して知りませんよ? それを国外に出ていた将軍がどこまで知っているのか・・・どうせ、隠し通路くらいのものでは?」
「隠し通路・・・ライザード様の口振りからするに、皇城にはあるのでしょうか?」
尤もな意見を述べるライザードと、その話し方に疑問を持つマルチナ。
「あぁ。俺も使った事がある。帝都の城にも、そういうものはあるだろうな。だからって、それで城の攻略ができるっつー確信まで至らねぇが」
「ゼネス様も? 凄いですね‼」
「隠し通路を通っただけで凄いもなにもねぇだろ。公的に伏せる以外にも。王族の避難用とか、使用目的なんざ 色々あるだろ? かといって、中に入れたから、あるいは外に出られたからってなんになる? 根拠っつーなら、もっと別のなにかなんじゃねぇのか? と・・・思うんだがな」
皇城にも隠し通路はあった。
そこには皇族のために施された仕掛けなんかもあったが――それを使うんだとしても、将軍である必要はねぇ。
例えば、皇城の隠し通路で俺が受けた呪いは、禁を破ろうとすれば声が出なくなる。その状態でも無理に情報を漏らそうとすれば、呼吸が苦しくなる。それでも辞めなければ、やがて死ぬ呪いだった。
つい俺は呪いを受けた首元をなぞるが、既にその効力は切れていて、後遺症なども存在はしない。
逆に言えば、そう言った呪いを相手に植え付け、それを利用する場合でも。その役は将軍ではなく、王族に連なるカーナが担うべき役割になるはずだ。
城も呪いも、王のためにあるのだから。いくら将軍がその護衛とはいえ、それを根拠として置きはしないだろう。
「言いたいことはわかりますが・・・いえ、そもそも自由騎士フリーダムとはなんなのか、この僕に教えてくれませんか? そうすれば城攻略の根拠について、なにか気付けるかも知れませんし」
「そうか、お前はフリーダムって言ったって知らねぇか」
「失礼なものいいですね。まるで知らないのが悪いことみたいに。そんなに有名なんですか? その自由騎士とやらは・・・」
「ガルバリオでは1、2を争うほどには有名な冒険者だったよ。それこそ、皇王陛下に謁見したことがあるぐらいにはな」
「お爺様に⁉」
「あぁ。つっても、そのことについては、俺も詳しくはねぇけどな。それにしても、フリーダムか・・・どこから話せばいいんだ?」
改めてフリーダムについて語るとなると、どこから話すべきか非常に悩む。それぐらいには、自由騎士フリーダムの活躍は凄まじかった。
「簡単な説明で良ければ俺がやるよ。間違ってたらその都度指摘してくれ。余計な先入観のない完全な第三者目線なら、俺が1番近いだろうから」
首を捻った先にいたサンが手を挙げると、
「分かった。それで頼む」
俺はその主張に乗っかった。
「S級冒険者。自由騎士フリーダムは現在も活躍する冒険者です」
「・・・ちょっと待ってください。現在も活躍する? この国の将軍なのに、ですか?」
「詳しいことは聞いてねぇが、今のフリーダムは完全な別人だ。襲名したんだよ」
「襲名・・・それほどのものなんですか?」
「それを今から説明するんじゃないですか、殿下。いいですか?」
「む・・・そうでしたね。続けてください」
「じゃあ気を取り直して。その特徴は全身を覆う鎧と、その見た目を裏切る軽やかな動き。手にした”得意の両手剣”では岩を切るほど鋭く、それを受けた人間はあまりの重さにへし折れたと言います」
「軽やかな動きでありながら、重い一撃・・・ですか?」
「そうです! その秘密こそ重鉄鋼! ここ帝国のさらに北にある採掘地で取れるその鉱物は、加工と魔力によって重さを変える不思議な性質を持った鉱石であり、それを自在に操って戦ったのが自由騎士フリーダムです!」
「ということは、見た目の差異のみでお爺様に謁見するだけの功を積み上げたと?」
「ああ、いえ! もちろん、それだけじゃないですよ‼ その剣の腕もさることながら、魔法の上手さも一流で。”どんな依頼も単身でこなして”しまう、なにより”報酬さえ必要としない”。そんな実力と人柄が見込まれたんだと思います」
「なるほど、単身で・・・・・・それは凄いですね」
「そうでしょう? 当時の子供は皆、自由騎士に憧れたと言っても過言じゃないぐらい。剣の流派がわからなかったせいで、それを形だけ真似た偽物が流行って、それが問題になったり、魔法も同じように感化されるほどでした。俺も、自分の魔法適性が”重力”じゃないって分かった時は落胆しましたよ。まあ、そんな特殊な適性がそうそうあるはずもないんですが・・・」
サンの笑ったり恥ずかしがったりしながらの説明に、俺はいくつかの違和感を覚えていた。それを思い出そうとするあまり、都度指摘してくれという言葉を、俺はすっかり忘れてしまっていた。