作品タイトル不明
帝国へ。二報
帝国へ入って1ヶ月。
大量のモンスターに襲撃され続ける行商生活にも慣れた頃、2度目の報告、もとい情報交換を行う大都市に到着する。
この情報交換は今回が最後。次は帝都で直接合流することになる。
より正確に、どんな思惑が張り巡らされているのかを見極める最後の好機。
踏み込み過ぎるのも危険だが、日和っちまったらそれこそ愚策。
出来るだけ引き出させねぇとな・・・。
そう意気込んで挑んだ世間話。
「なにをお探しで?」
「それがね、どうしようか困ってしまって―――」
前回を倣うように目当ての商品が”わからない”という合言葉を起点にして、情報交換が始まる。
お相手は前回とは別人のようだが、化粧や仕草のせいか雰囲気は近い。
身長、体型、声から別人で間違いないが、洗練された動きと顔つきは同格。
気を抜いていい相手じゃなさそうだと直感できた。
「―――そうですか。しかし、最近はどこも物騒になったものですね。街道でさえ、モンスターに群がられちまって。俺が言うのもなんですが、皆さんそんなに珍しい商品が好きかねぇ?」
「あら、そうなの? 確かに目を引く商品ばかりだけど、いくら珍しくてもモンスターの目を引くなんてことがあるのかしら?」
「ありませんよ。ありませんとも! あぁ、いや。そういう商品がねぇってわけじゃありませんがね。ウチじゃぁ取り扱ってないんですよ。そんなものを持って行商しようなんざ馬鹿のすることですから」
「まぁ! そうよね・・・危ないですものね」
「えぇ。なにより帝国じゃそんな商品を欲しがるのは商工会くらいのもんで、あちらさんは別動隊にモンスターを引き寄せて物品を運ぶだけの人手がありますから、こちらと違って使えますがね。それでも行商人から買おうとはしないでしょう。なんせ使う場合には、それなりの量が欲しい物なんで」
「だったら売れないわね~。売れないなら持ってくる意味がないものね」
「そういうわけで、最近はモンスターまで物騒になったのかと思う次第で」
「最近は北の方が騒がしいと聞くものね」
「えぇ、そうおっしゃる方の多いこと。ここ南も、その話で持ちきりといった具合で。北へ向かうと言うと皆さん口をそろえて、気を付けてねと言ってくださいます」
「それはそうよ~。だって軍が認めているんだもの。もう帝都では一触即発なんだとか。怖いわね~」
「しかし、そうなると軍が制圧に動くんじゃありませんか? それとも革命の後押しでも?」
「それが難しい話なのだけれど、軍も南北で対立しているそうよ? 南側を取りまとめてるのがリッジ公爵。北側を先導しているのがハインシー公爵。どちらも大きな領地を預かっている領主様でね。その領軍が中心になっているから、止められる人が居ないのよ」
「そりゃぁまた厄介なことで・・・その2つがぶつかっちまうと、どうなりますかね?」
「考えたくもないわ~。でも、そうね~・・・・・・リッジ公爵が率いる領軍には、とても強い将軍が仕えているそうだから、帝都みたいな街中で衝突するなら、そっちのほうが強そうじゃないかしら?」
「ほう・・・興味深い話ではありますね。つっても、軍同士のぶつかり合いでしょう? 個人の力だけでどうにかなるんでしょうか?」
「私にだって分かりませんよ。あくまでも噂話なんだから。ただ、やっぱり重要なのはお城じゃない? そこを取るためには、個人の力が強い方が有利だって考えがあるそうよ? ああいう場所はほら、狭いじゃない!」
「お城ですか・・・それほど重要なら、もう誰かの手に落ちてたりするんじゃありませんか? 奥さんみたいに」
「あらあら、私がそんなに魅力的だって言うの? こんなおばさんおだてたってなにも出やしませんよ? でも、そう考えるのは自然よね。ただね? そうであったとしても、その将軍ならどうにかできるって言われてるみたいなの。それも、なにか根拠がある噂なんですって」
・・・・・・根拠。
その将軍ってのはフリードリヒ、もとい自由騎士フリーダムでいいはずだ。
そして、アイツには謎が多い。
なぜ冒険者を辞めたのか、なぜ辞めておいて次代を作ったのか、なぜ帝国にいるのか、そもそもなぜ冒険者になったのか。将軍なんつー役に座ってる事さえも。
それが根拠に繋がってるとして、どこまで信じられる?
モンスターの襲撃については、予想通りとはいえ空振りだった。
だとすれば、残るは敵の策だ。
なら、既に帝都にも手が回っていると考えて間違いない。見逃す意味もないからな。
となれば、城なんて手中にあって然るべき――その根拠とやらで、それを覆せるのか? だが、できなかった場合の策をここで聞き出せるわけがねぇ。知ってるとは思えねぇし、知っていたとしても言わねぇだろ。
世間話の範疇に留まらねぇ。
なにより、
「それはそうと、最近は物騒な割に共和国とは仲良くやっていると聞いたんですが、本当なんですかね?」
「え~? そうなの? そう言った話はあんまり聞かないわね~」
「なんでも、共和国から人を受け入れてるとか・・・、変わった名前の人に覚えはありませんかね?」
「う~ん。ちょっと分からないわ~」
敵方の情報が少なすぎる。