作品タイトル不明
帝国へ。二面
「あんな偉そうなことを言っといてなんだが、人様の被害がどうとか言ってる場合じゃねぇかもな」
それからしばらく、また帝国の町や村を結びながら帝都を目指す道中。
飽き始めるほど見たモンスターとの戦闘を終えて零す。
「すまない。結局手伝わせてしまって・・・」
「構わねぇよ。この数だ。ライザードのこともある。下手に出し惜しみして怪我なんざ馬鹿馬鹿しいからな」
謝るサンと一緒になって、積み重なったモンスターの残骸を見やる。
帯のような部分で雷を操る鹿バンディアー、様々な毒を撒き散らすデカい毛虫ドラッグペスト、長鼻と全身を覆う針のような毛が特徴のステングアー。
どれも厄介な性質を持っているモンスター共。
それが山のように・・・・・・。
「・・・流石に疲れたですね」
「そうも言ってられないよ。売れそうな部分だけささっと頂いたら、残りは燃やして直ぐに出発だ。時間をかけるとまた寄ってくるよ」
「フッチの言う通り。剥ぎ取りは私がする。ホウは残骸を運んで」
「ちょっ、タン⁉ その役割は逆にしませんか⁉ 俺にこんなの運べってんですか⁉ そりゃぁ前衛の仕事でしょうが‼ せめてリーダー! リーダーにやってもらいましょう⁉ ね⁉」
うんざりするスイを慰めるでもなく、やるべきことを告げるフッチと、それに続くタン。そして割り振られた役に嘆くホウ。
目立った怪我もなく元気そうには見えるが、相当疲れているはず。
それぐらいの数と頻度だ。
普通の街道でこれほどモンスターに襲われることがあるか?
情報を買いに行った商工会でも、そんな話は聞かなかったが・・・・・・逆に、これが普通だからこそ話題にならなかったのか?
移動日には、ほぼ毎日これらの襲撃を受ける。
おかげで商工会から得た情報が間違ってねぇことは分かったものの、効率よく作業的に戦っても、それなりの時間を取られることが確定してだるい。
個人A級5人と元A級1人。
それだけの戦力があってさえ、1時間を超える戦闘もざらとなると・・・スイがうんざりする理由も分かるってもんだ。
「呼ばれてるぞ? 行かなくていいのか?」
「ホウなら大丈夫だよ。それより、なにか原因があるとは思わないか?」
「買った情報を見る限りじゃぁ・・・なんとも言えねぇな。誘引の可能性も考えたが――」
「あの3種が同時に来る理由がわからない、か・・・・・・」
「そういうことだ」
ヤーレンにも確認したが、普段の行商ではこのようなことはないそうだ。
といっても、モンスターの襲撃自体は存在するし、それが連日続くことも、無くはないらしい。
その原因の1つが誘引。
運んでいる商品や、時期、季節によってモンスターの気性が変わったり、匂いに釣られたりでそういうことは起こり得る。
中には嫌がらせで馬車にそういう細工を仕込んだりされることもあるそうだが、その辺りは調べ済み。というか、ヤーレン自前の馬車と皇王陛下からの依頼でサンパダが用意した馬車に、そんなもんが仕掛けられているはずもなく。商品についても同様だ。
なら気性や匂いはどうかと言えば、それこそ3種の説明がつかねぇ。
特定の1種なら納得もできる。近似種なら3種でも。
だが、鹿に毛虫によくわからん化物と。共通点がなさすぎる。
「他に可能性があるとしたら・・・・・・」
「人為的なもんだろうな。幻覚、幻惑、暗示――どうにもコイツは・・・」
「嫌な話だな。敵はモンスターまで使役できるのか?」
「だとすりゃぁ俺達の存在自体、筒抜けってことになるがな」
「考えたくもないな。もしそれが真実なら、分かった上で見逃されてるってことだ。待ち受けられてないわけがない」
「これが敵陣営からじゃなく、味方からの妨害ならまだマシなんだけどな」
「どういうことだ? 味方からって、あのカーナっていう彼女のことか?」
「アイツ個人っつーよりは、軍か公爵家からの妨害工作だったら・・・って話だな。呼んだ助っ人の実力の証明のためだったり、単純に帝都での準備を整えるための時間稼ぎだったり、あるいは追随するための時間調節だったり。そういうことなら楽なんだがな」
「ない・・・とは言い切れないけど、そこまでするかな?」
「次の時に探りを入れてみるしかねぇだろうな。ま、ねぇとは思うが」
「偶然の方がまだありそうだな」
1番楽なのはカーナ派閥からの妨害。2番は偶然。3番は敵からの嫌がらせ兼、小手調べ。いや、一番楽なのここまでの襲撃が偶然、且つ今後モンスターからの襲撃がなくなることだが・・・そいつは夢を見すぎだな。
既に事は起こってるんだ。
全て、誰かの思惑だと考えるべき所――これにどんな狙いがあるのか、を。