軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

トンチキトン

「それって、もしかして―――」

「ミーもこの国に来て先の事件を知った時には驚きましたネー。ですガー? これでいろいろと繋がったのではありませんカ?」

ハッ! とするマルチナに続くトンチキ行商人。

だが―――・・・・・・。

「そいつはおかしいだろ」

「おかしいとは・・・なにが、ですカ?」

「当然その噂に決まってんだろ。説明がつかねぇ」

「ゼネス様? 説明というのは?」

「まず、誰に見られたんだ? 暗殺なんて気分でやるもんじゃねぇだろう。計画ぐらい練ってたはずだ。竜の眼と暗殺に関係があるなら、誰かに発見されるような工程になってると思うか?」

御伽話じゃねぇんだぞ? 人目に付く野外で指示なんざだすわきゃねぇ。

にもかかわらず、竜の眼が発見されたんだとしたら・・・そいつは別件か、あるいは罠だ。

「確かにそうかもしれません・・・」

「それに暗殺をやるような連中が、姿を見られた相手を逃がすとも思えねぇ。こんな風に噂にされちゃ暗殺にした意味がねぇ。宣伝にしてぇなら正面から討ち取る方が効果的だ」

「それも、そうかもしれませんガー? 暗殺こそを売りにしている・・・という可能性もあるのデハー?」

「その可能性は否定しねぇよ。けどな、決定的におかしなことがあるのさ」

そう、これだけはあり得ないと言ってもいい。それほどおかしいことだ。

「誰が、どうやって。”竜の眼”だと判断したんだ?」

「どういう、ことでしょう?」

「あの時、皇城の前で顔を見せた教祖は、自分の眼を気味が悪いといった。人と比べりゃ確かに、随分と違うもんだ。それを理由に忌避されることもあっただろう。だが、奴自身の口から竜の眼だと言われたわけじゃなかっただり? アレが竜の眼だと言い当てたのは俺だ。俺には、あの眼に覚えがあったからな」

だから、本物のドラゴンを目の当たりにし、その目をのぞき込んだ奴にしかその情報は知り得ない。

その上で、それらの条件を満たすのは。あの瞬間のサルベージに居た酔狂な冒険者達だけ。そいつらが今、帝国にいるとは到底思わねぇ。

「フム。ですガ竜種のモンスターは多くいますヨ? それと似ていたから、そう表現したということハー?」

「ねぇな」

「なぜ言い切れますカー?」

「竜種の目と竜の眼は明らかに別もんだからだ。人の目と竜種の目もかなり違うが、竜の眼だけはもっと特別だ。竜種は見た目や特徴、生態や大きさから竜に近いと分類されて名前にドラゴンだのと付けられたりするが、実態は爬虫類。トカゲや蛇の方が近い。目にもその特徴が出る。人より多くの色が認識できるとか、詳しくはねぇが聞いたことがある。それを利用して魔法道具を作るんだとな」

そんな話を昔、興味のねぇ俺に聞かせたのはジーナだ。

「だが、竜の眼はそんなもんを気にしてねぇのか知らねぇが、眼の中に機能なんざねぇかのように、曇りの欠片も見えやしねぇほど澄んだ瞳なんだよ。まるで、この世のものとは思えねぇほどにな」

「言われてみれば、教祖様の眼はそんな感じだった気がします」

「しかし、であれバー? 自ら気味が悪いなどと言いますかネー?」

「そこは差別を受けた時の言葉を鵜呑みにでもしたんだろうさ。ドラゴンについてるならまだしも、人の顔についてるんじゃな。違和感は消えねぇよ」

何度も投げかけられた言葉は良くも悪くも覚えてるもんだ。

口癖や方言が移りやすいように。

「なるほど。それで決めかねているということですカ」

「それだけじゃねぇよ」

なにかを納得したかのようなトンチキ行商人に言ってやる。

「他にもナニカ?」

「てめぇのことに決まってんだろ? ころころと態度を変えやがって・・・それを急に望福教を打倒しろだ? しかも、それでお前になんの得がある? 昨日の今日だってのに、やたらと乗り気なのが気に食わねぇんだよ」

「・・・・・・ミーは商人ですヨ? 内乱や暴動なんかがあると困りますネ。それの解決、収拾を望むのはおかしいですカー?」

「現状、困ってるようには見えねぇな? 商売自体もやめてねぇんだろ?」

「未来的な意味で――と言っても、納得してはいただけないのでしょうネ」

トンチキ行商人は、こめかみ辺りをポリポリ掻きながら唸った。