作品タイトル不明
憶測と野望と欲求と
「それで? 結局こっちに残った明確な理由はなんだ? 教祖を言い負かしたからか? それとも、加護のレベルが上がったからか?」
聞いてみるものの、マルチナは困ったような表情で身振り手振りするだけだった。
「ふざけてるのか?」
そう思われても仕方ねぇ行為だ。
だから率直に尋ねるが、これでもかと首を振るもんだから質が悪い。
だったらなんで・・・と考えるより先に、
「もしかして、叔父様が黙ってろって言ったからじゃない?」
とバロンが気付く。
マルチナはバロンを指差し激しく頷く。
「・・・はぁ」
この後を想像すりゃぁため息も漏れるってもんだが、
「演技には見えませんね」
「だとしたら、敵であっても褒めてやるよ」
ライザードの言う通り、そういう小癪さは感じられなかった。
このままじゃ埒が明かねぇんで、もういいぞと言ってやると、
「演技と言えば褒めてもらえるんですか⁉」
マルチナは意気揚々と的外れなことを言い始める。
「・・・ふざけてるのか?」
あえて、もう一度問うが、
「私は本気です! 後、名前も呼んでもらいたいです!」
頭が痛くなるような返答しか返ってこなかった。
「もういい。最初の質問に答えろ。望福教を裏切った明確な理由は?」
「・・・・・・褒めてはもらえないんですね」
がっくりと肩を落とすその姿に。なぜそうまでして、という疑問が浮かぶ。
名前で呼ばれることに固執する辺りにも、幼少期の成育過程に問題でもあったのか? という疑念が生まれる。
だが、今は後回しだ。
そこから得られる情報もあるだろうが、今は餌ぐらいにしかならねぇ。
「全部素直に話したら考えて――」
「絶対ですからね‼」
食いつくのが早すぎるだろう。
そう思ったのは俺だけじゃなかったようで、バロンとライザードが目を合わせて首を傾げていた。
「明確な理由を説明するには望福教の教義が関係しますが、いいですか?」
「今更だろ」
「ありがとうございます! ご存じかとは思いますが、望福教では教祖様が1番偉いわけです。理由は人の願いを叶えられるから。ですが・・・教義に基づくもう1つの理由もあります。それが、人間であること」
「っつーことは、俺が神じゃなく。あくまで人間だって主張したからこっち側に寝返ったってことか?」
「手短に言うならそうなります。もちろん、それだけではありませんが――望福教の教義を信じればこそ、貴方様こそが多くを導いてくださる人に違いないと・・・そう思ったのです」
「納得はできる理由じゃないですか?」
「それ以外が気になるところだけどな」
「だったら聞いてみたらどう? 叔父様の格好いいところを教えてくれるかも知れないよ!」
「時間の無駄だ。そんなもんより、軍に流した学園の情報こそを知りたい」
茶々を入れようとするバロンを小突きながらマルチナを促す。
「軍へ報告した内容は、望福教が学園に長年侵入していたこと。それと、私達が急遽行うことになった特別実習が望福教の手引きで行われたこと。各地を手伝う冒険者達に望福教の信者が混ざっていたこと。それらが前々からの計画だったことになります。と言っても・・・そのほとんどは、私も後から知らされたことなので詳細まではわからず――」
「それで調査ってことになったんだな。詳細を知るためのなにかがあるかもしれねぇから。ところで、お前が後から知らされたってのは――」
「はい。モンスターの討伐が終わった後に合流した先輩から聞きました」
「やっぱりあの男か。アイツはなんて言ってたんだ?」
「第一段階は成功。第二段階の下地はすでに準備済み。第三段階では役割を貰えるぞ。よかったな、と」
さて、それぞれの段階がなにを指すのか・・・。
「計画の全貌までは聞かされなかったってことでいいんだな?」
「誓って。最後の役目についても聞けませんでした」
「アイツの居場所も知らねぇと」
「私が誘いを断って残った形になりますので、その後のことはなにも」
まぁそうか。
居場所がわかりゃぁと捕まえて、そっちから情報を引っ張ることもできただろうが・・・自分から残るといった相手に、わざわざ集合場所や移動先なんざ教えねぇわな。
「つっても、長年の工作や直前の仕込み、内通の事実とそれらが計画を基にした行動だってのを教えられたんなら、今回の仕込みがどの段階のための行動に当たるのかぐらいはわからねぇか?」
「それが・・・私がこの学園へ今年度に送り込まれたのは、なにも知らない信者の中で教職に就いているのが私ぐらいだったからのようでして・・・、学園の教師が一斉に居なくなった原因もそこに有るんじゃないかと」
「それを知ると実行できない役割ってーと・・・直ぐに思い当たるのは生贄になるか。囮や的ぐらいなら多少危険でもやりたがる奴もいるだろう。成功すりゃ英雄だからな。成果に合わせた立場も貰えるなら尚更だ」
「生贄・・・どこも血生臭い話ばっかりだね」
「宗教間と言えど戦争ですからね。血を見ることもあるでしょう。他があるとすれば、巻き込まれるような逃げられない位置に居なければならないから。というものも考えられますね。彼の団体には精神操作があれど、指揮を執る人間は必要そうでしたから」
嫌そうに言うバロンへ、ライザードが悟ったような物言いをする。
こういうところに皇族らしさが見え隠れするな。
「どちらにせよ、望福教は国教っつー強力な立場を得て、なにか物騒なことを企んでたってことだけは間違いねぇな。それが第三段階なら、宗教戦争は第二段階だったのかもな」
だとすると、第一段階がなんだったのかも気になってくるが・・・・・・それを考えようにも、素直に全てを話したので褒めてくれますよね! ってな顔をするマルチナのせいで気が散って上手く考えがまとまらなかった。