軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side――ライゼン・A・ガルバリオ

「ダンデ。そなたの息子は頼もしく育ったな」

「そうですね。私など必要としないほどに・・・・・・」

ゼネスの去った部屋で大切な友人と他愛もない会話をする。

ただそれだけのことが、随分と難しくなったものだ。

「こういってはなんだが・・・そなたは息子から必要とされたことがあったか?」

「アレからは1度も。アレの兄、グランからであれば、覚えもありますが」

「正門での会話を聞いた。なぜゼネスにそのような教育をした?」

「辛い現実に負けぬよう。自らの力のみで立てるようにと――・・・しかし、少なくとも忙しさなどを理由とせず、自らの手で行うべきだったとは、流石に思わされました」

「そうすればなにか変わったか?」

「そうしていれば、ゼネスも心置きなく復讐を選べたでしょう」

「そうなってしまっては我が息子クライフが浮かばれぬな。1人で飛び出したのでは、アレも今のように生きてはいまい」

「そうかもしれません。ですが、この度のような失態を軍が演じることはなかったでしょう。そう思えば、どちらが国のためだったか・・・」

「いかんな。そうやって直ぐ国のためと考えてしまう。私も他人のことは言えぬが、それこそが子育てに失敗した理由であろう」

我が嫡男と次男が皇王という椅子を奪い合うような真似をしたのも、結局はそうした考えを見透かされてのことだろう。

寂しさにつけ込まれ、唆されて落ちぶれた。

今の2人を可哀そうだと言うつもりはないが、私に原因はなかったと胸を張って言えるわけでもない。

もっと真剣に向き合って居なければならなかった。そのはずなのだ。

「確かに、耳の痛い話ではあります。しかしながら、新参の貴族としても、国防を担う立場としても、それを考えずには居られなかった。かといって、我が子にそれを分かれとも言う事ができなかった。逃げていたのは私だったのかもしれません」

「そうだな・・・私も。それは母の役目だと、あるいは教育係の仕事だと、そう言って逃げていたのかも知れぬ。長く生きていようとも、偉ぶる立場であろうとも、こうして自らの過ちに気付かされるのは変わらぬな」

「立場故、安易に受け取る事ができない場合もありましょう。例え正しさを理解していようとも、体現できるとは限らない」

「しかしそれこそが傲慢というものなのだろうな。同じ1人の人間であるはずなのに・・・」

現にゼネスは神と言える立場になったが、その言動に変化はなく。私にも十分すぎる敬意を表し続けてくれている。

国を管理する身として、これほどありがたいこともあるまい。

あれほど平伏した姿を見せれば、神と王。どちらが偉いのか? などと言い出す輩も現れぬだろう。

それだけで対立や混乱が起こる心配をしなくてもいいのだから、こちらとしても頭が上がらぬ。

「それにしても、すまなかった。そなたの息子を神になどしてしまった」

頭があげられぬのなら、今のうちに下げてしまおう。

この瞬間であれば、止める者もおるまい。

「いいえ。非は私にこそあります。神という存在を作り上げれてしまった。認めなければならない状況を止められなかった。あまつさえ、皇都を預かる中央軍をそのようなものに利用されてしまった。英雄などと・・・呼ばれる資格もありません」

「そう気に病むな。そなたが精神操作を受けた件には宮廷魔導士も関与している。そなただけの責任ではあるまい。それに竜の眼だ。彼の者も只人では無かったのだろう?」

「それでも・・・油断があった。慢心があった。その事実は消せないのです。なにより、犯人を逃がしてしまった。これでは名誉を挽回する機会もありません」

「足取りは掴めぬままか?」

「特徴的な外套を身に着けていた半面、それを脱ぎ捨てられては。追跡も、聴取も上手く躱され・・・それに、軍部を骨抜きにされていた経緯もあり、兵の練度からして捕捉は不可能かと――・・・・・・」

「―――そうか。行方不明者はどのようになった?」

「軍からは数人が消えました。民間からも十数人。姿が見えなくなったという報告が上がっています」

「こちらも宮廷魔導士をはじめ数名が帰らぬ。自らの意思で出て行ったならまだしも、精神操作を受けたままかも知れぬと思うと・・・どうにもな」

「今後も捜索は続けてまいりますので、続報があればお知らせに参ります」

「うむ。期待しよう・・・しかし、神か。この先、どうなるのであろうな? この国は。いや、この世界は」

「想像もできません。ですが――・・・」

「ですが? なんだ?」

「アレは我が息子とは思えぬほど強かで慎重です。不用意な真似はしないでしょう。その点だけは確かと言えます」

自信に満ち溢れた表情でダンデは言い切る。

その姿を見て。

やはり、なんといっても親子なのだな。と笑っていると、

「なにか、面白いことでもありましたか?」

ダンデは怪訝な顔で私を覗き込む。

「いやなに、ゼネスも似たようなことを言っておったと思ってな」

「ゼネスが? なにか失礼でも?」

「大したことではない。そなたをどうか助けてやってくれと頼んだのだが、断られただけだ。その必要はない、とな」

「それは――・・・とんだご無礼を!」

「そうではない。確かに、この私からの頼みを断ると言った時には驚いたが、必要がないと言った時の表情はそなたにそっくりだった。突き放したのではなく、信頼してのことだったはずだ。羨ましくさえあったのだぞ?」

「・・・・・・・・・そうでしたか。では、失望されたかもしれませんね」

「そうかも知れぬな・・・だが、敢えて言おう。まだこれからだ。そなたも。私もな」

今更、我が子からの信頼を取り戻せるかなどわからぬ。

なにかをしたとして、上手くいく保証もありはしない。

返って軽蔑される結果になるやも知れぬが、それでも。

1番身近だったはずの相手すらも見てやれぬ者に、国や世界の先など見据えられるはずがないのだ。

この目が耄碌する前に気付かせてくれたこと――感謝する。ゼネスよ。

そなたの行く末に少しでも力を貸せるよう、この目を凝らさせてもらうぞ。