軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

離間の刻7

「これはお初にお目にかかります。我が望福教の教祖をさせていただいている者です。既にこの身は教祖という存在になりますので、名前もありません。なので是非、よろしければ教祖様とお呼びください」

外套に備え付けられた頭巾を目深まで被ったままにふざけたことをぬかす。

「知っておるかもしれんが、儂が教皇のグレアム。そこのたわけの父親でもある。呼び方は好きにしてくれて構わん。・・・が、そちらを様付で呼ぼうとは思わんな」

正面からぶつかると決めたからだろうか、爺さんはどっしりとした印象を与えるようにふるまう。

それはいい―――いいんだが、この外套の男・・・見覚えがあるな。

ハッキリとは思い出せない。

いや、多分ハッキリと見たわけじゃねぇ気がする。

どこだったか?

「私の紹介は必要ないだろう。ここへ至るまでに話していよう? そうでなかったのなら、そこの信者の手抜かりだ。そちらから聞くといい」

「それはあんまりなお言葉。我々は分かり合える。現に、貴方のお父上がそうであるように」

そういいながら、外套の男はわざとらしく御父上へ手を向ける。

へりくだるようでいて見下す態度。やっぱりどこかで・・・。

そもそも、この外套自体がなにか―――。

「教祖様のお言葉ですよ⁉ 貴重なお言葉です‼ もっと有難がってもいいんですよ⁉ いえ‼ 有難がるべきなんです‼」

そう熱弁するグレンゼーの姿を見てなぜだかピンときた。

この外套・・・見覚えがあると思ったら、そうか! ガルドナットの商会にいた奴か‼

あの時は下から見上げてたせいで、正面から見た時の違いにすぐ気づけなかったのか。

ってことはアレも、こいつら望福教の仕業だったってことか?

いや、そういえば望福教は東の国から流れてきたって話だったはず。

もっと言えば東の国へも流れてきたって話じゃなかったか?

3国も跨いでやることが内1国の国教変更? それだけで終わるのか?

ここよりさらに西にあるガルドナットでさえ商会を裏から操るだけの権力を持ってたのに?

アレも精神操作だったのか? その割にはあの商会頭は饒舌すぎた。

だとすりゃぁ別の方法で? それにしちゃ随分と簡単に手放していたようにも思える。

真意を探るには表情が見たい。

どれだけの策士だろうと、詐欺師だろうと、思惑があれば表情は動くはず。

それが真っ直ぐなもんじゃなくても、なにかしらは読み取れる。

だからせめて、その目に宿る意思だけでも。

「さあ! 改宗するなら今ですよ? そのようなろくでなしが束ねる教会の、しかも曖昧に過ぎる教えなど捨ててしまってはどうです⁉ こちらの教祖様にかかれば、加護などという不確かなものに頼らずとも、心から望んだ願いは叶うのですから‼ さあ‼‼」

グレンゼーの力説に微笑む教祖。それに応えるように観衆達からの大歓声。さぞ気分のいいことだろう。

「その話が本当ならば大したものなのだがな」

「嘘なわけがないでしょう⁉」

「言葉だけで信じられることほど不確かなものはないだろう? その証拠に、貴公らは皇王陛下へお目見えできていまい? 至急の要望だったはずだが、心からの望みではないというのか?」

「手痛いところをつかれますね。口惜しくも、我が望福教の教義も常時完璧にはあらず。まずは我々と同じ思想を持ち合わせていただく必要があるのです。この場合ですと、そう。皇王陛下にも」

「それは難しいだろうな」

「それは、なぜ?」

「顔も名前もわからぬ輩と同じ思想を持つ国家元首がどこにいる? そんな怪しい国など聞いたこともない」

「それは然り。ですが・・・我が尊顔はあまりに醜く、一部の信者でさえ泡を吹く始末。貴方へお見せするのも気が引けるほど。ましてや皇王陛下へなど・・・不敬と断ぜられることでしょう」

「陛下は見目だけでそのような判断はされんよ。くだらぬ妄言で保身しようとするのは、己の言葉に自信がないからではないか? もしくは責任が取れぬことを恐れているか・・・どちらにせよ、碌なものではないと思うが? はて、どうだろうのぅ?」

俺への援護として爺さんが教祖を挑発する。

それにはグレンゼーや観衆ばかりがやいのやいのと声を荒らげるが、教祖はどこか他人事だ。

「ふむ。どうしてもとおっしゃるか」

「皇王陛下の前でも同じように渋るのかのぅ? それは身分をわきまえぬ傲慢であろう」

「ここに陛下はおられないようですが・・・まぁいいでしょう」

やけにあっさりと教祖は頭巾を後ろへズラす。

そうして、目を開け―――・・・それだけで分かった。

分からせられた。

なぜ、望福教にはそこまでの求心力があったのか。

どうして、それだけの権能を振り回せたのか。

そりゃぁ信者もあわ吹くわけだと。

そこには以前見た瞳があった。

睨み合った瞬間を今でも思い出す――ドラゴンの瞳がそこにはあった。