作品タイトル不明
side――ジーナ
私は、自分のことを天才だと思ったことなど・・・本当はないんだよ。
その理由は偏に、君の存在を知っていたから―――。
現に、まだ私が見つけたばかりの魔法を。君は口頭だけで理解し、再現してみせる。それこそ天才の所業なんじゃないかと、私は思うわけだ。魔力量の多さなど、極めて些細なことだったんじゃないかな?
君は、私が君のことを知ったのは私が冒険者になった後のことだと思っているかもしれないけれど、私が魔法を研究しようと思ったのは君という存在を知ったからだよ。
だから、ようやくさ・・・・・・ようやく、私が望んだ光景が見られる。
大衆に君が認められる。そんな瞬間が訪れる。
その予感だけで、私はどうにかなってしまいそうなほど、嬉しかった。誇らしかった。
いつも、君はなにかに悩んでいたね。
行き詰まり、抗い、打ちひしがれ、違う道を探した。
その先にもまた行き止まりがあって、罠があって、誰かが居て、抱え込んで・・・それでも。立ち止まることだけはしなかった。
人によっては諦めたように見えたかもしれない。投げ出したように見えたかもしれない。
けれどそれはどれも違っていて、前へ進むため。なにかを選んだだけに過ぎないんだ。
自分にできることはなにか、自分がやるべきことはなにか。
誰かのために役割を、なにかのために使命を探していたね。
まるで、自分には価値がないかのように―――。
そんなはずなど、ないというのに。
君は特別だ。
なにも、私だけがそう思っているわけじゃない。
長く君の相棒であったクライフ君や、君と同じ旅路を辿ったアンナ君、エリック君、フェリシア君だって同じ思いを持っていたはずだ。
今、私の隣に立っているベルザフォン君であっても、なぜ君を信頼していると思う? どうして君に惹き付けられる?
才能という言葉だけで言い表せるなにかじゃない。
正しく君の生き様にこそ、皆。憧れたからじゃないのかい?
英雄の息子としての君の生まれ。
加護を持たず蔑まれ、疎まれた過去。
冒険者を目指し、追い求め、それでも手に入れられなかった未来。
それらを背負って今尚、前を向き、立ち止まろうとしないその姿勢こそが、君の魅力だ。
なに1つとして、君は望んでやしなかったのかもしれない。
望んだものたった1つさえ、手に入れていないのかもしれない。
けれど、その手に既にあるものは。決して誰かに引けを取るようなものじゃない。
ましてや、なにも持っていないなどと。そんなことはあるはずがない。
もうそろそろ、君はそれを知っていい。
この先も。
君は望んだ道を歩くわけではないんだろうさ。
君は君自身が思っている以上に優しいからね。
誰かに頼まれたり、勝手に恩義を感じて、進むべき道を決めるのだろう。
そしてその度に君は、もっとできたはずだったと、他にやり様があったと自分自身を見損なうのだろう。
そのようなこと。誰にもできやしない幻想だと・・・気付きもしないで。
だから今ここで証明したまえ。
これは君にしか成し得ないことのはずだ。
そう思いを込めて、人の壁を切り裂く半透明の背中を見つめ、見送った。