作品タイトル不明
空間の警戒
「取り敢えず、ここからは脱出する方向で構わねぇよな?」
「ああ、出来るだけ早くそうしたい・・・が、この空間は監視されている。そのまま出たところで上で取り押さえられるだろう」
「階段あがってすぐが監視室だったしな。しかも、その奥の檻を閉じられても出られなくなる。檻の操作が監視室からできるなら、相手は部屋に籠ってるだけで足止めになる。応援もすぐ来るだろうな」
「そりゃ軍の施設なんだから当然だ。だから監視室を制圧してほしかったんだが・・・」
「それを言っても仕方がないのはもうわかっただろう? その上でどうするかを話そうじゃないか。先に1つ言っておくと、この空間で魔法を使うのは難しいと思うよ。大々的に精神魔法を使っている影響か監視の延長かはわからないけれど。魔法制御になにかしらを干渉させているようだ。とても単純な魔法・・・例えば、そうだね。爆発するだけとかなら、その範疇じゃないかもしれないけれど、細かい作業は出来ないと思った方がいい」
あえて掌の上で魔法が失敗する様を実演しながら説明するジーナ。
「その魔法を使ってそうな奴は?」
「既に魔眼で魔力の流れを確認してみたけど、ここにはいないね。談話室と同じ要領で発動させてるんじゃないかな?」
「この人数を相手にか?」
「この場合は人ではなく部屋へ向けて魔法を使っているはずだよ。ここと瓜二つな牢獄でもあるんじゃないかな? 恐らくだけどね」
「牢獄かはわからないけれど、同じような空間ならあるはずだ。それも1つじゃなく幾つも。地下階層の形はある程度統一されていたはずだから」
「そんなことも調べてたのか?」
「ダンデ将軍がおかしくなる前に、な」
御父上の指示か?
ついでに、そのおかしくなったのがいつからなのか、手紙の内容はなんだったのかと聞きたくなっちまうが、ここは堪える。
「この集会はいつも、どれぐらい続くんだ?」
「時計がないから正確には測れない・・・けど、そうだな。1時間以上は続くはずだ」
「そうすると、しばらくはこのままというわけだね? 監視についてはなにか分かっているのかい?」
「監視されてるのはこの広場だけだってことくらいかな。それぞれの部屋までは覗かれていないはずだ」
「そこまで悪趣味じゃねぇ――っつーよりは、効率と要領の問題か」
「だろうね。どんな魔法なのかは予想がつくけれど、各部屋までとなると1人や2人で行えるような魔法じゃなくなるからね。それに、見る方も細部まで目が届かないだろう」
「そもそも窓も出口もありはしないんだ。魔法も制限されているなら、穴を掘っての脱出も不可能だろうと思われているはずだ。なにせ、見回りさえないんだから」
「その代わりに不定期な集会があると」
「ああ。危うく頭がおかしくなるところだった」
まだしばらく続くらしい異様な光景を遠い目で眺めて言う。
「古典的だけど、最も効果的で効率的なやり方だからね。手遅れになる前で良かったんじゃないかな?」
「まぁどんなに見え透いたやり方でも、目の前で堂々とやられた日にゃぁな。それを止められねぇってのも、また鬱陶しいだろう」
「そうなのか? 確かに入信者がやけに多い気はしたけれど・・・」
「十中八九、最初の集会で入信した人物は全員が仕込みか、入信する見込みで連れてこられたものだろう。軍は教会との結び付きが強いけれど、その分。陥落させられれば、後はなし崩しにできると踏んでのこと。それに、全員を入信させる必要がないのも、相手はわかっているはずだ」
「なぜそんな風に言い切れるんだ? 当事者だった俺からすれば、むしろ否が応でも全員を入信させたいように感じたけれど・・・」
「そりゃぁ当事者はそうだろうよ。けど、現状を見てみろ。望福教に興味がねぇ奴も、対抗しようとはしてねぇだろ? 反対の声が表にさえ出なけりゃ、それは存在しねぇのと同じだ。勢力を削ぐって観点から見れば、取り囲んだ時点で勝ちなんだよ。あの勧誘はあわよくばってやつだ」
「なるほど・・・確かに、意見があろうと聞こえなければ意味がないか」
たった1人の声は観衆に掻き消される。
そんなことはどこでだって起こり得ることだ。
その数が1人より多くなろうが、それを囲む観衆が多くなれば結果は変わらねぇ。
「でも、それがわかったからってどうするんだ? ここから脱出するのに役に立つのか?」
「いや、私としてはただの暇潰しの会話に過ぎないからね。手掛かりなんてものは出せやしないよ? 出口の階段には警備もいるみたいだし、集会が終わった後にこっそりと脱出するのがいいんじゃないかな?」
ジーナが悪びれもせずに釈明すると、ベルが大きく肩を落とすが、
「俺も集会後にと思ってたんだが、意外とそうでもねぇかも知れねぇぞ?」
俺にはどうしても気になる事ができていた。